2001.05.05 創刊
【 甲状腺機能亢進症の生徒さん 】
通常は練功をすると, 気血の循環が促進されるので, 身体が温かくなる
のだが, ときにはその反対に, 身体全体やその一部が冷たくなることがあ
る。リアル教室で中年女性の生徒さんを指導していたとき, どのような工
夫をしても, 練功中に身体の冷えがとれなかった苦い経験がある。彼女
は甲状腺機能亢進症を患っており, 少し動いただけでも疲れやすく, 暇
さえあれば横になってしまうという。甲状腺機能亢進症を改善させて, こ
の疲れやすさを治したいというので, 私のリアル教室に通い始めたので
ある。多少脱線をすることになるが, この病気を知らない読者のために,
甲状腺機能亢進症について簡単に触れてみたい。甲状腺機能亢進症
は, 読んで字のごとく, 甲状腺の機能が亢進して, 甲状腺ホルモンが過
剰に分泌され, 首にある甲状腺が蝶が羽を広げたような形で腫れる病気
である。甲状腺ホルモンは, 体内の新陳代謝を活発にし, 細胞や組織の
発育・成長に大切な働きをしている。そのため, 甲状腺機能亢進症の症
状は, より新陳代謝が活発になるために, 心臓の脈拍が速くなり, 夏季に
は非常に汗かきになり, 食欲は旺盛だが, エネルギーとして蓄積されな
いので, 極端に痩せ, また疲れやすくなるという。この病気は, 初潮以後
閉経までの女性に多く, 自分の抗体が甲状腺を攻撃するもので, 自己免
疫疾患のひとつと考えられている。
【 左手だけが冷える 】
彼女は, のどぼとけの下が蝶が羽を広げたように腫れ, 身体も手首も極
端に細い状態であった。入門者は, 誰でも最初は馬歩站椿功から始める
ものなので, 疲れやすいということではあったが, 馬歩椿からやってもらう
ことにした。会員の紹介で教室を訪れる女性の中には, 馬歩椿の姿勢を
たったの3分間も維持できない人もいる。それと較べると彼女は, 甲状腺
機能亢進症という病を持ちながらも, 馬歩椿を20分間もやり続けたのであ
る。最初から馬歩椿を20分続けるというのは, 普通の健康な男性でも決し
て楽なことではない。相当に辛かったと想像される。それからもめげずに
毎週教室に通い続け, 一ヶ月ほど経った頃だと思う。彼女は練功を始める
と, 左の手が冷たくなると訴えるようになった。触れてみると, 右手は温か
いのだが, 左手は確かに冷たいのである。私はこの頃まだ新米の指導員
であったので, どうしていいのか困惑することしきりであった。幸いなことに
この時期はなお, 師匠について修行の身であったので, 身体が冷える理
由と, その対処法について質問してみた。師曰く, 「原因は, 肉体的ないし
は精神的に緊張していることにあり, その対処の法は, 練功前に温かい飲
み物をとり, かつ身体を軽く動かして温めておくことである」とのアドバイス
を頂いた。早速, 次の週に彼女に試してみた。
【 左手が温かくならない 】
練功前に雑談をしてリラックスした雰囲気を作り, 温かい緑茶を飲んでもら
い, そして両腕と肩を回して身体を温めてから, 馬歩站椿功の練功を始め
てもらった。ところがである, 練功を始めてから5分もしないうちに, またまた
左手が冷たくなってきたのである。練功を続けていれば, やがて温かさが
戻るだろうと期待していたが, 結局左手は最後まで冷たいままであった。
折角の師匠のアドバイスも役に立たなかったのである。一指禅功を始めた
頃, 師匠が語る話の内容の中に, 当時の私の少ない経験からは, うさん
臭く「眉唾」ものだと感じていた事が少なからずあった。胃のもたれには双
手抱球功がすぐに効くとか, 双臀攬月功は頭痛に即効性があるとか, あ
るいは, 気が見えるとか, 気の色は五色だとか, などなどである。 しかし,
気功を鍛錬していくうちに, 「眉唾」ものと感じていたこれらの事柄が, す
べて事実であることを知った。師匠の語る言葉の中に, 嘘や張ったりはひ
とつもなかったのである。であるから経験的には, 彼女の左手の冷えは, 一
瞬のうちに治るはずであった。予想外の展開に戸惑いつつ, 再び師匠に
同じ質問をしてみた。残念ながら, 答えは同じであった。
【 マニュアルを見つける 】
とすれば, 自分で調べる外ない。気功の書物を調べていると, 同じ一指
禅功の林厚省師の「実践中国気法功」(たま出版1990年)の中に, 「気功
修練時に左右の体半分が熟したり, 冷えたりする人がいるが, これは何
故か」(P204)という項目を発見した。その原因は「練功前の情緒が不安
定であったり, 修行中の姿勢が不正確であったり, 体にゆとりがなくて快
的(快適では?)でなかつたりして, 人体の気血の不調和, 経絡の不通,
陰陽の不均衡などがつくられているからである」とある。さらに, その対処
法については, 「練功前に必ず十分な準備体操をうまくやって, 体を発
熱させておくか, またはあつい飲料を飲んでおくかすると, これらの不均
衡現象も次第に消失するはずある」と結んでいる。適切な回答を期待し
ていたが, これは基本的に師匠のものと同じであるから, この対処法で
は, 彼女の左手の冷えは治らないのである。それからも解決法が見つか
らないまま, 甲状腺機能亢進症の症状を改善するために練功を続けるし
かなかった。
【 起立性低血圧症が原因だった 】
それから二ヶ月ほど経った頃だろうか, 彼女は練功中に突然崩れるよう
に床にうずくまってしまった。顔を見ると真っ青で血の気が消えていた。
新米の指導員としては, 練功中に生徒さんが倒れるというのは, 初めて
の経験だったので, どうしていいのか訳が分からずオロオロするばかりで
あった。「練功中に倒れることもある」との指導は, 師匠から一度も受けて
いなかったからである。それでも10分ほどすると, 彼女は立ち上がれるよ
うになり, 意外な言葉を耳にすることになる。「起立性低血圧症なんです」
というのである。甲状腺機能亢進症の他に, もうひとつ起立性低血圧症
があったのだ。起立性低血圧症とは, 立った姿勢でいると血が下肢に溜
まり, 脳に流れる血量が不足するために, 一時的に意識を失う病気であ
る。小学校の朝礼のときばたばたと児童が倒れるのは, この起立性低血
圧症の場合が多いそうである。そうだったのか, 練功中に左手が冷たくな
るのは, そのためだったのである。実際に気功を指導してみると, マニュ
アルだけでは対応できない状況に, たびだひ出会うことになる。指導す
る側の経験もまた大切な宝なのである。彼女のその後はどうなったかと
言えば, 左手が冷たくなるのは最後まで治らなかったが, 甲状腺機能亢
進症は大いに改善され, 元気に仕事に打ち込んでいる次第である。
** 会員からのメッセージ ***********************
『 倦怠感と眠気に襲われる (その一) 』 (富山 NRさん♂)
『毎朝5時に起床して、約1時間位、馬歩に取り組んでいます。中腰で居る
ことには慣れているためか、脚のつらさは予想していたほどではなく、まだ
まだ立っていられそうな気がします。むしろ、先日のメールでもお聞きしまし
たが肩や首の付け根の痛みの方が強かったです。(今はずいぶん肩の痛
みも楽になってきました)また、今のところ、ホームページに書かれているよ
うな気感も、はっきりと感じられています。しかし、先週の土曜日あたりから
言いようのない倦怠感や眠気に襲われるようになりました。(今も続いてい
ます)倦怠感や眠気は、気功と関係がありますか?あるとすれば、肩の痛み
のときのように、自然に無くなっていきますか。』(6月13日)
『 返信 NR様 ご連絡ありがとうございました。
■ご質問にお答えします■
最初から60分の練功は長すぎるのではないでしようか。たかが立っている
だけのように思えますが, 馬歩椿は激しい運動をしているのと同じなのです。
20〜30分でやってはどうでしょうか。
日本気功倶楽部 事務局 藤岡 正巳
Email aam13920@nyc.odn.ne.jp 』
『 倦怠感と眠気が治る 偏頭痛も治る (その二) 』 (富山 NRさん♂)
『ありがとうございます。私はその後、時間を平均25分前後に落として、毎
日欠かさず立禅に取り組んでいます。倦怠感、疲労感もすぐに無くなり、
毎日快適です。ここ10数年続いていた偏頭痛が、この1ヶ月は激減しまし
た。週に4から5日はひどい頭痛に悩まされていましたが、6月は何と1ヶ月
で5回でした。特に中旬以降はまったく頭痛がないのです!これも立禅の
おかげだと思います。本当に感謝しております。ありがとうございます。毎
朝の練功・・・短い時間ですが、いろいろな変化がありとても楽しいもので
すね。左半身が熱くて右半身が涼しい、ということもありましたし、へその下
(下腹部)にソフトボールくらいの大きさに感じる玉が出来て、下半身がず
っしりと重くなったように感じることもありました。このまま気長に、焦らず続け
ていきます。今後ともよろしくお願いいたします。(6月30日)
※倶楽部から一言
『一指禅功のトレーニングは, 太腿が鍛えられるまでは, 決して楽ではありま
せん。慢性病の場合には改善するまでに, かなりの期間を必要とすることも
あります。しかし, 風邪や頭痛などには, 即効性が期待できます。 慢性の頭
痛や偏頭痛でお悩みの方は, 是非一指禅功を体験して下さい。NRさんが
体験したように, 「今までの頭の痛みは何だったの」というように, 頭痛が消え
ることがあります。』
『指先から真っ直ぐに気が出る』(静岡 KKさん♂)
『練功の報告です:
先週双臀攬月功をしていましたところおそらく「気」だと思われるものが一
度だけはっきりと見えました。交差させた手の指先一本一本すべてから真
っ直ぐ気が出ていて薄い霧の中で白色光の懐中電灯をつけてそれを見
ている様な感じでした。とても感動しました。
質問です:
自分は学校が半日で終わるので天気のいい日は近くの神社の御神木の
前で練功しています。とても居心地が良い感じだったのでそこを選びまし
た。そこでの練功は、自宅でやる時より非常に気持ち良く軽い頭痛など
がある時もスッキリ治ってしまいます。この様に自宅での練功と比べて目
に見えて体へ良い影響が出るというのは何か理由があるのでしょうか?
またこのまま御神木の前での練功を続けてもいいのでしょうか? とても
気持ち良いのですが自宅での練功とはかなり感覚が違うように思われ不
安になったので質問させていただきました。』(7月10日)
『 返信 KK様 ご連絡ありがとうございました。
■ご質問にお答えします■
気が見えましたか。条件がそろえば, 気が見えるのは自然なことです。これ
からも予期しない不可思議な事を経験することと思います。執拗に追求せ
ずに自然に任せて下さい。緑豊かなところは, それだけ生命力の強い場と
いうことなので, 練功には適した空間と云えます。そのまま練功を続けて下
さい。
日本気功倶楽部 事務局 藤岡 正巳
Email aam13920@nyc.odn.ne.jp 』
** 購読者コーナ **********************
発行元: 日本気功倶楽部
監 修: 天地 一道
編 集: 正田 竜二
※「バーチャル気功空間 気の世界」に掲載された内容を無断で複写、転載、転送および引用することを禁止いたします。なお、お友達の方へ紹介の為の転送は大歓迎です。
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