藤岡 正巳
(02)気功とは何か
心身の自己鍛錬法
【 林厚省老師の定義 】
「気とは何か」という問いと同様に,「気功とは何か」もまた,人の頭を悩ま
す大きなテーマに違いありません。ただ「気」については,雲を掴むような捕
らえどころのない頼りなさがありました。とんなに説明しても,頭の片隅に何
か違うな,という思いが残ってしまうようなところがあります。それに対して
「気功」とは何かといえば,誰もが「自己鍛錬の方法」と答えるに違いありま
せん。気功については,基本的な部分で一致しているのです。
「気功」とは何かについては, 一指禅功の林厚省著「中国気功法」(たま出版)
の中の説明が最も分かり易く,訳文も見事なので,少し長くなりますが引用さ
せていただくことにしました。林厚省老師は, まず劉貴珍たちが1953年に命名
した「気功」という名前の解説から始めています。『気功には, 簡単にいうと練気
(気を錬る)や練意(心を練る)の意味が含まれている。気功の「気」の字には呼
吸の意味があり, 「功」の字には意識的に絶えず呼吸や姿勢を調整・練習する
意味がある。』気功とは,心身の自己鍛錬法であるといいます。それでは自己鍛
錬とは「何を」「どのようにして」鍛錬するのでしょうか。『気功の鍛錬とは練気と
練意のことであって, 意識によって気を引き出し, 経脈に沿って気を運行すること
によって, 関係する臓腑の機能が増進・強化されるのである』と続けています。平
たく言えば, 気功の自己鍛錬とは, 姿勢や動作, 呼吸, 意識の三つの技術を使っ
て, 経絡内を流れる気を循環促進させる,ということができます。『それを通して
体内の陰陽のバランスを回復し, 体質を強化し, 病気であればそれを治療し,
病
気でなければ体を強化することができる』のです。
【 気功の自己鍛錬法の優位性 採気 】
林厚省老師の以上のような「気功」の定義には, 言葉足らずの部分があるよう
に思えます。気功の自己鍛錬が,気の流れを促進させることだけなら,指圧や
針灸とどこが違うのでしょうか。指圧や針灸も共にツボを刺激することで,経
絡内に滞っている気の流れを改善させるものです。わざわざ時間をとり,しっ
かりと気合を入れて,気功のトレーニングをするより,足裏マッサージの方が
テレビを見ながらでも気楽にやれるというものです。気功のトレーニングが,
指圧(針灸)やマッサージと較べて,決定的に優位なものがなければ,やる意味
がないように思えることでしょう。ところが,決定的に優位なものがあるので
す。気功にあって,指圧やマッサージにないもの,それが「採気」です。指圧
やマッサージは,ツボを刺激して体内の気の流れを循環促進させます。しかし
ながら,気の量が増えるわけではありません。意地悪くいうと,小さなコップ
の中をかき混ぜているようなものです。気功は,体内の気の流れを循環促進さ
せるだけでなく,気の量を増やす「採気」か必ず伴うのです。採気とは,自然
に無尽蔵にある外気(清気)を,体内に採り入れることです。外気を体内に採り
入れながら,経絡内の気の流れを促進させるのですから,『病気であればそれ
を治療し, 病気でなければ体を強化することができる』というものです。
【 一指禅功の自己鍛錬法 ツボを開く 】
気功の「自己鍛錬とは」を定義づけてみると,姿勢や動作, 呼吸, 意識の三つ
の技術を使って, 外気を体内に採り入れながら,経絡内を流れる気を循環促進
させること,と言うことができます。トレーニングする度に外気を少しずつ採
り入れるわけですから,次第に内気は充実してきます。内気が充実してくれば,
病気の回復や体力の強化が計られます。気功で第一に大切なことは,内気と外
気を交流させるということです。人間を個体として捉えるのではなく,自然の
一部として,自然と交流する生命体として捉えることです。一指禅功の場合に
は,基本である「馬歩椿」の姿勢をとりさえすれば,自然の外気を体内に採り
入れることができます。一指禅功は,姿勢や動作, 呼吸, 意識の三つの技術の
うち,呼吸法と意念を用いない代わりに,ツボか重要な役割をします。つまり
「馬歩椿」の姿勢をとると,自然とツボが開き,内外気の交流が始まるのです。
一指禅功の自己鍛錬法の一つが,この内外気の交流の窓口であるツボを開かせ
ることにあります。普通の人のツボは,半分閉じられている状態ですが,一指
禅功を鍛錬すると,次々と身体のツボが開いてきます。ツボが開くと,外気を
採り入れ内気を充実させて,病気を回復させるだけでなく,いろいろな潜在能
力も花開いてくるのです。
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【やさしい気功のミニ講座】
発行元: 日本気功倶楽部
監 修: 藤岡 正巳 (主席指導員)
編 集: 正田 竜二
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