並木克敏(天地一道)著
「バーチャル気功空間 気の世界」

2001.05.05 創刊




第六章 気との遭遇 その2
   

(06-03) 練功中の反応   

新人とベテラン 表層から深層へ 

2005年02月28日 (No.67号)
   


【 「気とは何か」という質問 】

   
   
練功中の反応とは, トレーニングする過程で生じてくる「気感」のことなのだ

   が, 気功に大いなる興味はあっても, 実践にはなかなか踏み出せない読

   者の中には, 「気感」とはどんなものなのかと, 今なお「いぶかる」向きも決
   
   して少なくないと思われる。気功という名前は知っているが, 実践経験のな

   いまったくの初心者に, 「気とは何か」という質問を浴びせられたとき, 「気

   功」の核心を突いているだけに, どう答えてよいやら迷ってしまうのは私だ

   けだろうか。もし, 貴方がベテランの練功者であったなら, 「気とは何か」と
  
   いう質問に, どのように答えるであろうか。「気」とは, 両親より受け継いだ

   「先天の気」と, 食物の栄養素と自然界の外気(清気)からなる「後天の気」
   
   が, 体内で合練功中の反応とは, トレーニングする過程で生じてくる気感
  
   のことなのだ成されたものである, と貴方は答えるかも知れない。しかしな

   がら, そのような説明では, 初心者にとって何の答えにもなっていないの練

   功中の反応とは, トレーニングする過程で生じてくる「気感」のことなのだで

   ある。「先天の気」の「気」とは, 一体何かということの答えになっていないか
  
   らである。それならば, 科学的な機器による測定によって, 気功師が発す

   る外気から, 一般の人よりも多くの電磁波や赤外線, 静電気や生物光など
  
   が検出されている, と答えるであろうか。再び, しかしながらである, 最先端

   の測定器を用いたとしても, 人間全体に含くまれている個々の成分を, 個

   々別々に検出したに過ぎず, 「気」そのものを総体として, 測定したわけで
  
   はないのである。「気」とは, 今まで検出された電磁波などの個々の成分が

   合成されたものなのか, あるいは, 現在の測定器では未だ検出不可能な未

   知の微量の物質なのか, 答えは今なお出ていないのである。


   
   
【 言葉では説明できない 「気」の存在 】
   
   
   まったくの初心者に「気」をいくら言葉で説明しても無力である。私が若い

   頃に愛読したもののひとつに, 江藤淳氏の一連の文芸評論がある。江藤

   氏の書かれた文章の中で, 今も印象に残っているのは, たしか「成熟と喪

   失」であったと思うが, 物事を言葉によって表現できるという確固たる自信
   
   であった。彼の文章は, やさしい日常的な言葉を使いながら, 物事の本質

   に鋭く迫るもので, その論理展開には大変説得力があり, とても魅力的に

   感じていた。そんな彼も1999年に, 脳梗塞により「形骸」 (心身の不自由)
   
   となった我が身を, 自ら「処決」(自殺) したのである (「」内の言葉は江藤淳
   
   氏の遺言から引用)。熟年のひとつの身の処し方として, 当時考え深いも

   のがあった。少しばかり脱線したので話を元に戻すことにしよう。またも , し

   かしながらなのである。江藤淳氏が言うように, 言葉にどれほどの力があっ

   たとしても, 「気」を感じたことのない人に「気とは何か」を言葉だけで説明し
   
   ても, 理解することは不可能であろう。たとえば, 人間の味覚を例にとってみ

   よう。私たち人間は, 生まれながらにして, 大人の味覚が備わっていたわけ

   ではない。幼児からのあらゆる能力を発達させる過程で, 味覚も同時に進

   化させてきたのである。このような共通の味覚体験があるからこそ, 目の前

   に並ぶ料理も, さっぱりしているとか, こってりしてとるとかお互いに批評し

   合えるというものである。ところが気功は, 日常生活にも, いかなるスポーツ
  
   にもない, 特殊な姿勢でトレーニングすることで, 健康を維持回復させるだ
  
   けでなく, 日常生活では決して味うことのできない, 特殊な身体感覚を体
   
   験することができるのである。気功のトレーニングに伴う, この身体感覚の

   経験なしには, お互いの間の溝は決して埋まることがない。それは, 味覚

   オンチの人に, 醤油の隠し味を説明しても無駄であるのと同じことである。

   とすればまったくの初心者に 「気とは何か」との質問を受けたとき, いかな
  
   る対処の方法があるのか。少なくても気功に興味を持っている人であるな
   
   らば, 気功を体験してもらうしかない。

   ※江藤淳氏の遺言
    
   「心身の不自由が進み、病苦が堪え難し。去る六月十日、脳梗塞の発作
   に遭いし以来の江藤淳は、形骸に過ぎず、自ら処決して形骸を断ずる所
   以なり。乞う、諸君よ、これを諒とせられよ。
   平成十一年七月二十一日 江藤 淳」 



  
【 気功は体験がすべての出発点 】   
   

   「気功」というキーワードで, ホームページの間をネットサーフィンしている

   と, 気功について書かれた, とても真面目な批評に出会うことがある。ある

   ホームページでは, 気功とは, はたして本当に信用に値する存在なのか
 
   というような主旨で, 「○○文春」や「△△現代」などの週刊誌の記事を引

   用しながら, その真偽が説かれている。詳細に読んでみると, 理路整然と

   していて, 相当にインテリな人物が書いた文章のように見える。結論として

   彼曰く, 信じてしまえばうどん粉などの偽薬でも治療効果があるのだから
   
   気功もそれに近いものではないかと言うのである。なるほど, 気功を前頭

   葉だけで考えるならば, これも説得力のある一つの仮説とも言えなくもな

   い。私が知る限り, 気功を懐疑的に捉えているインテリの多くは, この見

   解に近いように見える。しかし, この種の論理は, 客観的と称して気功を

   外から眺めているに過ぎず, 現代の人体科学をもってしても説明のつか

   ない, トレーニングに伴う数々の不思議な体験をまったく知らないのであ

   る。たとえばほんの一例を挙げるなら, 自律神経の働きであるはずの体

   温調節を, 一指禅功のベテランは, 指を一本動かすことでいとも簡単にや

   ることができる。現代の人体科学は, この事実をどう説明してくれるのだろ

   うか。気功は, 解釈するために存在するものではなく, まずは実践ありきで

   あり, 実践の伴わない論理は, 否定的であろうと, 肯定的であろうと, どちら

   も意味がない存在と思われる。実践してからじっくりと解釈して欲しいもの
  
   である。生命体の営みの全体像は, 一つの小さな前頭葉の働きだけで,

   理解できるものではないのである。


 
   
【 初心者の反応 表層の気感 】   

   
   たとえばの話であるが, インテリの貴方が, 深く「反省」しながらも半信半
   
   疑のまま, 気功のトレーニングに踏み込んだとしよう。入門してまず最初

   に行うのが, 一指禅功の基本中の基本である「馬歩站椿功」である。これ
   
   は, 膝を曲げて両手を前方に差し出す, 馬上の騎士の姿勢である。この

   「馬歩椿」の姿勢は. 見ている限りは何の苦もなくやっているように映るが

   膝を曲げて立つと大腿四頭筋に負担がかかるので, 歩くことが嫌いな人

   は慣れるまでは辛いことだろう。「馬歩椿」の姿勢に慣れてきたら, 次に
   
   「双手抱球功」に進むことになる。この「双手抱球功」は, 数ある一指禅功

   の功法の中でも, 気的な反応がきわめて強い功法の一つである。身体の

   前で30cmほど離して両手を向かい合わせにするもので, 気的に敏感で

   なくても, おそらく80%以上の人が, 何らかの気感を体得できるだろう。
   
   しかも, 練功を長期間にわたって続けていくと, 気的な反応が量から質へ

   と転換していくことが体験できる。「双手抱球功」をやって, 初心者のイン

   テリ氏がまず最初に感じるものは, 両手の指先にほんの少し躍動してい
  
   る心地よいヒビレであろう。しばらく練功を繰り返していると, このヒビレと共

   に, 指先にうっすらとした汗が滲んでいることを知ることだろう。そうして練

   功した後に手に目を移すと, 真っ赤になっている両手の平に, 貴方は驚

   くことだろう。両手を擦り合っているわけではないのに, どうして真っ赤に

   なるのか不思議がるに違いない。これが練功したときに生じる, 初歩的な
  
   気感と身体の変化である。
 
 

【 ベテランの気感 深層の気感 】
   
   
   初歩的な気感を体験してから, 敏感な人で数週間後に, そうでない人で

   も数ヵ月後には, 次の段階の気感と出会うことになるだろう。両手の間に
   
   何か抵抗するかのようなものが, 芽生え始めてくると, それが次第に空気

   の「柱」のような「物体」として実感できるようになる。両手で押すと, 少し

   ではあるが押し返してくる。練功を続けていると, やがて空気の柱は, 風

   船のような「玉」に変わり始める。丸くて軽くて弾力性のある「風船玉」を,

   両手で挟んでいることが実感できるのである。このとき, 「双手抱球功」と

   いうネーミングの意味が理解できよう。「双手抱球功」とは, 両手の間に
  
   玉ができるという功法なのである。これらの反応が, 「双手抱球功」に伴う

   気感のすべてかというと, そうではない。一年後に再び「双手抱球功」を

   練功すると, 気感はまったく違ったものになってくる。両手の間に存在す

   るのは, 玉は玉でも「風船玉」ではなくて, 「胃袋」の玉なのである。縦長

   でどっしりと重く, べたべたとした粘着性のある「胃袋」を, 両手の間に実

   感できる。しかもこの「胃袋」は, 両手で挟んでいるという感じではなく,

   下側にある手の平の上に載っているという感じなのである。「双手抱球

   功」は, 慢性胃炎や胃潰瘍を含めた消化器系の疾患に, 効果が高いと

   いうのも納得されよう。気の反応というのは, 初心者では身体の表層で

   起こり, ベテランになると次第に身体の深層に及ぶのである。



** 会員からのメッセージ ***********************


  
 『合理的にできていますね』(愛媛 H.Aさん♂)

『龍形功をはじめて感じたことがあります。一見風変わりな格好の練功ですが
   膝への負荷には相当のものがあります。指の形なども珍奇に見えて、実は非
   常に合理的に考え出されたものだという実感が持てました。今までの練功 は
   こういう練功のための下地であったのだろう、また、これから教えていただくい
   ろ いろな功法も、それまでの積み重ねの上に可能になる功法なんだろうなあ
   とこの先 の練功がますます楽しみになりました。』

   
   『近況報告します』(台湾在住 Daruma♂)
   
   『はじめまして。立禅功を始めて二週間あまり。15分過ぎると きつくて膝がブ
   ルブル震えだしますがなんとか20分毎日やってます。やりおわると伸ばした
   腿がジーンと震えっぱなしですが 気は強くなってます。私は初心者ではあり
   ません。といっても 正式に気功をならったわけでもありません。現地で気功を
   やってる台湾の一般の方に教えてもらっただけです。理論的なものもなく見よ
   う見まねで朝の空気を身体に取り入れるような運動で一年ほどやりました。お
   かげで初心者と違い気を感じます。具体的に言うと次のとおりです。
   気は常時両腕、掌に感じます。立禅功の姿勢では両腕を空気のクッションの
   上に預けている感触があり心地よいです。しかし、膝は15分ぐらいでがくがく
   して大変です。指先から斜め上に直線に出る気は白くうっすらと見える程度
   です。他人に対して気を使ったことはありませんしできません。自分の身体の
   周りが気で囲まれているような意識があり自分の身体から数十センチ以内は
   目に見えない空気のクッションの感触があります。そのクッションを指でつまん
   で震わせると身体の中のある部分が刺激を受けてるような感覚がありこのマッ
   サージは日課になっています。指先同士はかなり敏感です。』



 
   ** 購読者コーナ *************************


    □ 意見 「あくびについて」□   
  
   『こんにちは。前回の「あくびの効用」を読ませていただきました。私は不整
   脈の持病があります。普段はなんでもないのですが, 神経が疲れてくると不
   整脈が起ってきます。そんなとき大きな「あくび」を数回すると, 不思議に脈
   が落ち着いてきます。深呼吸では効果はないのです。不整脈のある方は
   試してはどうですか。』(仙台 ♂)


   
   

 ※気功やこのメルマガの内容に関して, ご意見やご質問がありましたら, 是非
   
お寄せ下さい。お待ちしています。
   
    Email aam13920@nyc.odn.ne.jp  編集  正田 竜二
  



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【バーチャル気功空間 気の世界】月刊
                                   
   発行元: 日本気功倶楽部

監 修: 天地 一道
東京芸術大学美術学部大学院終了

編 集: 正田 竜二


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