並木克敏(天地一道)著
「バーチャル気功空間 気の世界」

2001.05.05 創刊




第六章 気との遭遇 その2
   
(06-01) 自発動功

身体の中に別の生き物が棲む

2004年12月25日 (No.65号)
   


【 「外気導引」と「自発動功」 】


   
一指禅功には摩訶不思議な秘伝の「技」が数多くあるが, その中でも代表的な

   ものに, 手を触れずに相手を動かす「外気導引」と, 自分の意思とは関係なく,

   ある動作をすると, 身体が勝手に動き出してしまう「自発動功」がある。「外気

   導引」については, 読者の方は半信半疑ながらテレビでお馴染みだと思われる。

   テレビで表演されるのは, いつもパホーマンス度の高い「外気導引」の方であっ

   て, 「自発動功」のシーンを私は見たことがない。というのも「自発動功」は自

   分で仕掛けて自分で動くのだから, 誰が考えてもこのうえなく「うさん臭い」か

   らである。「外気導引」であれば, タレントなど相手がいるのだから, 多少なり

   とも信用が生まれるというものである。「自発動功」は, 気功の未体験者にとっ 
 
   て, ショーとしてもバカバカしくて見る気にもなれないだろう。夜中に寝返りを

   うつのならともかく昼間の意識のはっきりしているときに, 自分の意思とは関係

   なく, 勝手に身体が動いてしまうわけがないと考えるのは当然である。今まで生

   きてきた人生の中で, 普通の人なら自分の身体が自分の命令に逆らって動いたと

   いう経験を, おそらく一度たりともしたことがないと思われるからだ。もしある

   とれば, 脚気かどうかを知るために椅子に座り, ぶらりと下げた脚の膝頭を叩い

   て, ビクッと動いた経験ぐらいかも知れない。それは, 外からの物理的な刺激で

   動いたのに過ぎないと言うだろう。意思に逆らって身体が勝手に動くはずがない

   と考える人が, この日本でも多数派である。しかしながら, 多数派がいつも正し

   いとは限らない。秘伝の技を使うと, 人は嫌でも勝手に動いてしまうのである。

   摩訶不思議としか言いようがない現象である。常に「現象」は, 科学に先行して
 
   いる。万有引力の法則が発見されたから, リンゴが落ちたのではない。リンゴが

   落ちたから, 万有引力の法則が発見されたのである。まずは現象ありきでなのあ

   る。



【 意識と無意識 】
   
   
   人間は, 思考を司る前頭葉を極度に発達させてきたので, 歴史的には「意識」の

   世界を重視する傾向が強く, 「無意識」の世界をあまり大切なものとは見てこな

   かった。しかし, フロイトの深層心理学を出すまでもなく, 実際には人間が生き

   ていくうえで, 「無意識」の世界は, 「意識」の世界に劣らず重要であることが

   知られるようになってきた。人間の肉体だけを見てみよう。人間の身体には, 全

   身の骨格筋や皮膚に分布する「体性神経系」と, 呼吸、循環、消化を促す「自

   律神経系」の二つの神経が張り巡らされている。「体性神経系」は, サッカーや

   野球などの意識的に身体を動かす「随意運動」に強く関与し, 「自律神経系」

   は, 無意識のうちに身体の奥にあるさまざまな臓器をコントロールし, 意思とは

   関係なく勝手に動く「不随意運動」に関与している。 「自律神経」は, 呼吸、

   心拍, 血圧、体温、消化など, 身体の恒常性を保つために意思とは関係なく勝

   手に, そして常に休むことなく信号を伝える神経回路である。寝ている間に呼

   吸が止まらないのも、自律神経の働きに他ならない。こう見てくると, 人間を含

   めた生命体にとって, その生命を維持するうえで, 「自律神経系」である「無意

   識」の世界が, 決定的に重要なことが分かる。人間は無意識の動きによって,

   生命が保たれているのである。この「自律神経」の司令塔が, 脳の中枢にある

   視床下部である。



【 勝手に身体が動く「舞踏病」 】
   

   意識とは関係なく勝手に身体が動いてしまう, 「不随意運動」を伴う病気にパ
  
   ーソンキン病がある。多くの人は病名を知っているが, 具体的な症状や患者の

   表情を目にしたことがなかったのではないか。あの偉大な元ヘビー級チャン

   ピオンのムハメド・アリが, この病に犯されたことで, パーソンキン病の実

   態がテレビ画面に写し出されるようになった。私は, 手足や身体が震えるだ
  
   けだと思っていたが, 動きが緩慢で, 顔から表情が消えていることに, 少な

   からずショックを受けた。カシアス・クレイを名乗っていた頃からの, 「蝶
 
   のように舞い, 蜂のように刺す」あの華麗なフットワークが目に焼きいていた

   からである。平凡社世界大百科事典によると, パーキンソン病の『病因は不明

   であるが,中脳の黒質にあるメラニン含有細胞の変性が重要である。ここでつ

   くられるドーパミンは神経伝達物質として黒質から大脳基底核,視床への神

   経伝達に関与している。パーキンソン病では,黒質の病変のためにドーパミ

   ンの産生が阻害され,基底核などの機能障害が生ずると考えられる』(楠進)

   とある。素人流に乱暴に云うと,「脳障害」ということになる。もう一つ の

   「不随意運動」を伴う病気に, 遺伝性の「ハンチントン舞踏病」がある。舞踏

   病は, 自分の意志では抑制できない,不規則な不随意運動が起こるもので,患

   者の歩行が舞踏のように見えるのでこの名が付けられたという。その症状は

   『舌うち、口すぼめ、しかめ面、頻回の目のまばたきなど顔面筋や舌筋の不随
 
   意運動のほか、首ふり、肩すくめ、腕ふり、腰ゆすりなど四肢近位部や体幹部

   の不随意運動をみることもある』(大阪難病研究財団)そうである。舞踏病の原

   因は, 大脳皮質の広範な萎縮にあるというから, 同じく「脳障害」ということ

   になる。



【 別の生命体が棲むかのように 】 
   

   パーソンキン病や舞踏病のように, 脳に障害が起こると, 身体が自分の意思に

逆らって, 勝手に動き出すこともある。とすれば, ある特殊な動作
をすること

   で, 脳に特殊な刺激を与え, 身体を勝手に動かしてしまうことも, あながち夢物

   語ではないと, 読者も感じるのではないだろうか。そうなのである。この特殊な

   動作こそが, 一指禅功の「自発動功」という秘伝の技なのである。自発動功とい

   うのは, なにも一指禅功の専売特許ではなく, 他流派でも行われていると聞いて

   いる。だだし, どのような方法を採用しているかは, 残念ながら知らない。一指

   禅功では, 「一指」の動きに秘伝の技が凝縮されていることを, 前に書いたこと

   があるが,「自発動功」もまたそうなのである。特殊な指の動かし方をすること

   で, 自分の身体は自分の意思とは関係なく動き出すのである。さらに不思議なこ

   とに, 身体の動きが一人一人違うのである。飛び上がる者もいれば, だだっ〜と

   勢いよく後ずさりする者もいる。私はと云えば, まず腰が右回りに回転し始め,

   20回ほど回ってから自然に停止し, 今度は左回りに同じくらい回って止まる。そ

   の頃は「自発動功」をやるたびに, ほとんど同じような動きが繰り返された。多

   分, 読者はこんな質問をしたいに違いない。「自分の意思でその動きを止められ

   るのか」と問うことだろう。勿論, 自分の意思で止めることはできる。けれど,

   この動きに従っている限り, 精神的にも肉体的にも., なんとも言えないほどに気

   持ちがいいのである。逆に, 動きと反対に回ろうとするとすると, きわめて気分

   が悪くなってくる。この気分の悪さは, 日常生活では経験したことがないので,

   読者に伝えることができない。それでもあえて云うならば, イライラが昂じて爆

   発寸前の極点に達し時の気分に近いであろうか。「自発動功」は, 気持ちがいい

   ばかりではなく, 身体にも大変いいのである。「自発動功」とは, 自分の指を自

   分の意思によって動かす「随意運動」によって, 自分の身体が自分の意思とは関

   係なく 「不随意運動」を起こさせることである, と定義することができる。それ

   はまた, 身体の中に, もうひとつ別の生命体が棲んでいるようにも感じられる。


  
 
** 会員からのメッセージ ***********************


『半信半疑でしたが』(MSさん♂)
   
   『気功は毎日続けております。気の感覚もかなり分かるようになりました。最近
   は、足を曲げた姿勢にもなれたので、少しづつ低い体勢で練習しています。
   20分位すると膝が震えてきます。足の辛さとは裏腹に、心が静かで穏やかな
   状態になるから不思議です。これも気功のおかげかなと一人ごちたりしていま
   す。体調のほうも以前は高めだった血圧が標準値になり、慢性化していた下
   痢の症状も知らぬ間に改善していました。また、疲れにくい体になりました。本
   当に感謝しています。最初は半信半疑の入会だったので4単位分しか申し込
   みをしていませんでした。今は最後の功法まで学びたいと考えています。残り
   の4単位分振り込みますので、今後もご指導下さい。』
   
   
   『風邪がすぐ治る』(岡崎 Hさん♂)
   
   『風邪はあまり引かないんですが、こないだ引いちゃいましたが、一日で治り
   ました。気功のお陰ですよね。ありがとうございます。馬歩たんを40分やる
   と、けっこう疲れますが、筋肉痛にならないのは、気功だからなんでしょうか
   ね? 』


   『生命線が少し伸びた』(MSさん)
   
   『引き続き外気功(初級)に進みたいと思いますので宜しくお願いします。コ
   ツコツと休まず錬功してます。^^とりだてて大きな変化はないです。ただ左
   手の生命線は, 右手に比べ2.5cmも短いので, 気になり常に見ていたので
   すが, 実測したら七ミリ伸びたでしょうか(笑)。右手の方は長いんですが。』
  

   『練功中に手が冷たい』(ニューヨーク在住 グラフィック・デザイン♀)

   『会員のみなさん, こんにちは。ただ今, 抗老益寿法を練功していてます。練
   功を始めてから2日目ぐらいに手はしびれるのですが, 冷たーくなってきまし
   た。練功中に冷たくなるのは, どこか悪いからだと前に聞いていたので、生理
   不順か、注意不足からの失敗が重なるので、更年期かとも思い、漢方針医者
   にみてもらいました。そうしたら、体の疲れと夏のストレスとで 冷凍庫状態だ
   ったそうです。今も治療してもらっていますが、一度目の治療のすぐあとから
   また練功中に手先が暖かくなりました。ただ, 動きのある滾球法とは違い, 抗
   老益寿法の指先だけ動かすというのは, おっしゃるとおり退屈ですね。』

  
** 購読者コーナ *************************


□ 意見 「収功について」□
  
   『こんにちは。私は風邪を引きやすいので, 一指禅功ではないのですが, 気
   功をこの秋より始めました。周囲の人はベテランばかりなので, 質問しづらい
   のです。ずうずうしかと思いますが, 質問させて下さい。練習の後に収功しま
   すが, どんな効果があるのでしょうか。練習するたびに, 収功しなくてはいけ
   なのものなのですか。』(東京 OL♀)

   
   ※倶楽部より一言
   
   『気功のトレーニングをすると, 身体の中の内気と, 自然に存在する外気が交
   流を始まめます。トレーニングをしている間は, 常に内外気の交流が行われて
   ます。収功は, 内外気の交流を終わらせ, 日常生活に戻るための技術(技)で
   す。トレーニングの最後に, 必ず収功を行います。収功をしないと, 身体を壊
   します。』


 
   ※気功やこのメルマガの内容に関して, ご意見やご質問がありましたら, 是非
   
お寄せ下さい。お待ちしています。
   
    Email aam13920@nyc.odn.ne.jp  編集  正田 竜二
  



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【バーチャル気功空間 気の世界】月刊
                                   
    発行元: 日本気功倶楽部
   監 修: 天地 一道
   編 集: 正田 竜二


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