並木克敏(天地一道)

「バーチャル気功空間 気の世界」

2001.05.05 創刊




第五章 気との遭遇
   
(05-05) 馬歩椿の形

初心者とベテラン (No.57)

   

2004.04.17
   


   【 一指禅功の馬歩椿 ただ立つだけ 】   
   
   
   
一指禅功の極意は,毎日練功を続けることにあるので,「初心者とベテラン」

   という前に,週一回の教室での練功だけでなく,毎日家で鍛錬を続けているの

   かどうかが問題である。練功の期間が長いということと,一指禅功の「ベテラ

   ン」ということとは,必ずしも一致しないからである。週7回練功する人と,

   週1回の練功しかしない人とでは,一年後の鍛錬の結果は想像に難くない。一

   指禅功の基本は,馬歩椿にある。動きのまったくない馬歩椿の姿勢では,呼吸

   法や意念は勿論のこと,肛門を締めるとか, 背骨を一直線にするなどの, 特別

   なテクニックは, まったく要求されていない。馬歩椿は,両手を前方に突き出

   し,膝を曲げてただひたすら立つだけの姿勢である。これは外気功に進んだと

   しても,馬歩椿の姿勢に対する特別な要求があるわけではない。馬歩椿は,ど

   こまでいっても馬歩椿なのである。そんなわけで,初心者とベテラン,練習十

   分な人と練習不足な人を,見分けるのは容易なことではない。太極拳などの動

   功であるなら,初心者の人の動きには「ぎくしゃく」したところがあるので,

   それほど見慣なれていない人でも,ベテランかどうかは,比較的簡単に判断さ

   れよう。一指禅功を指導する場合,これら四種類の人をあの手この手を使い,

   見分ける必要がある。




 【 練習十分な人と練習不足の人 】

   
   
練習十分な人と練習不足の人を判別するのは,比較的簡単である。その方法と
 
   は,まずは最初に相手の顔を見るのである。馬歩椿の姿勢は, かなりきついも
 
   のがあるから, 毎日練功していれば, その自信が顔に表れるし, 練習不足の人

   の顔には不安がちらりと走る。何事も準備不足というのは,誰しも不安なもの

   なのである。そして次に, 膝を見る。馬歩椿の姿勢では, 膝を大きく曲げて腰

   を低くすれば, 気血循環促進の効果は高くなる。実際に腰を低くした途端に,

   両腕と三焦(鎖骨から恥骨)の部分に強烈な反応が生じてくる。一指禅功でなく

   ても,馬歩椿をおやりの方は,是非試していただきたい。しかしながら, 腰を

   低くすれば効果は高いけれど, 長い時間その姿勢を保ち続けることはきつい。

   一指禅功では, 脚がぶるぶると震えてくる, この「きつさ」に耐えらるかが,

   気功世界へ入れるか,それとも今来た道を戻ってしまうか,どうかの分かれ道

   なのである。太腿の筋肉が鍛えられて, 慣れてしまえば,どうってことないの

   だが, ここで引き返してしまう人も少なくない。そのようなわけで, 練習不足

   の人は, 膝の曲げる角度が極端に少ないので,おのずから分かるというものだ。



【 馬歩椿の形が決まる 】

   
  
 それでは,練習十分の初心者とベテランとでは,同じ馬歩椿でもどこが違うの

   だろうか。意欲にあふれた初心者であれば,毎日家で練功しているので,脚の

   震えはすでに克服しているはずだし,腰の位置がベテランと同様に十分低いの

   で,一見すると見分けがつきにくい。ところがである,ベテランの身体は,ど

   っしりとして微動だにしないのに対して,初心者の方は,頭を動かしたり,肩

   を揺すったり,あるいは身体が前後に揺れたりと,どこか落ち着きがない。軸

   が決まっていないのである。確かに,最初に馬歩椿という姿勢をとったとき,

   師匠が模範を示しながら説明されても,自分の身体の全体の形が今,実際にど

   のようになっているのか,自分では見ることができない。正しい姿勢なのか,

   そうでないのか,最初のうちはまったく見当もつかないず,雲を掴むような心

   持である。家に帰り鏡の前に立ち,馬歩椿の姿勢を確認するしかない。これは,

   バーチャル気功道場の会員の方にも共通することで,模範姿勢を参考にして,

   鏡の前に立ち自分で姿勢を絶えず修正する必要がある。このとき肝心なことは,

   正しい姿勢を身体に覚え込ませることである。鏡の前で姿勢を修正するたびに,

   そのときの両腕や両手の形を意識的に覚えるのである。馬歩椿⇒姿勢の修正⇒

   意識的に覚える,という過程を繰り返し行うことで,馬歩椿の形を徐々に身体

   が覚え,そして軸が決まってくるのである。馬歩椿というきわめてシンプルな

   姿勢でさえ,私の場合には,形が決まるまでに一年以上の歳月を要した。




   【 気場とオーラの発生 】   

   
  
 馬歩椿の形が決まり,練功中に微動だにしなくなると,次第に「力強さ」が芽

   生えてくる。ベテランの領域に入ると,ただ立っているだけなのに拘わらず,

   大地に根を張ったような力強さがみなぎってくる。それは,足の裏が土俵に

   張り付いているかのような取り組みを見せる,あの横綱・朝青龍の相撲の世界

   ともどこか共通している。身体が,実際の体重以上に重くなっているのであろ

   う。その反対に,練習十分の初心者には,馬歩椿が形の上では似ているが,こ

   の力強さや重さがない。妙に軽いのである。この微妙な違いが判るのは,長い

   間, 多くの人々の練功を見続けてきた賜物である。お母さんが,自分の子供の

   表情から,今何を求めているのかを知ることと似ている。あるいは,長年野菜

   の栽培をやってきた人が,一枚の葉っぱから,その野菜の生育情報を得ること

   とも似ている。人は飽きることなく, 少しだけ注意を払って見ているだけで,

   本物かどうかが見えてくるものなのである。「馬歩站椿功」の「站椿」とは,

   杭のようにしっかり立つという意味である。杭のようにしっかり立つことがで

   きれば,やがてその人の周囲には気場が発生し,身体からオーラが発すること

   になる。この気場やオーラは,実際に感じることもできるし,また見ることも

   できる。K1のミルコクロコップの身体からオーラが出ている,という形容詞

   で使われる代物はない。一指禅功を鍛錬すれば,誰でも本物のオーラ(生物光)

   が身体から発せられるのである。




** 会員からのメッセージ **********************


今回は, 偶然にもイニシャルが同じ「TMさん」ですが, 全くの別人です。

   
   『練功時間が長くなると, 気感が変わる』(TMさん)

『功法中に幾ばくか面白い体験をしました。1昨年の春先に手術をしその後
   今一つ体調が戻らなかった為、再度立禅功を始めたのは夏も終わる頃でした。
   おまけに私は若い頃大腿四頭筋を一部裂断していた為、中々長期間の練習が
   出来ませ んでした(出来て6〜8分程)。それでも暇を見つけて練習するよ
   うにしている内に10分・20分と出来るようになり、最後には30分連続
   で出来るようになりました(と言っても今年に入ってからですが・・・)。
   面白い事に、出来る時間が延びるにつれて手に感じる気の感覚が変わってい
   きました。最初の10分出来ない頃は4,5分経つ頃にようやっと涼風のよ
   うな感じが起きていました。やがて平均して10分以上出来るようになると
   涼風のような感じがして、やがてそれが痺れるような、むず痒い感じに変わ
   っていきました。20分以上出来るようになった頃には手全体を圧力が取り
   巻いているような感じへと変わっていました。また、そうなると手法の形を
   取ったり、ちょっとリラックスして手に注意をはらうだけでそういった感じ
   が起こるようになりました。双手抱球功の練習が三週目も半ばになった頃、
   合わせた手の内に圧力をともなう痺れが起きていました。面白い事に呼吸に
   合わせて引き合ったり、反発しあったりしていました。感じとしては磁石を
   両手に持って合わせるものに近かったでしょうか。』

  

   『質問が二つあります』(TMさん)
   
   『いつもお世話になっています。質問が二つあります。一つは期待される効
   果について、[腰を落とす深さ×練功時間]=効果、の図式は成り立つので
   しょうか?それならば、時間がなくて練功時間を多く取れない場合は、練功
   時間に合わせて、腰を落とす深さを変えていいのでしょうか?例え時間が短
   くなったとしても、日によって腰の高さが上下するのはあまり好ましくない
   のでしょうか?
   
   もう一つは練功中に、自分の外界と内界の境目がなくなり大地に抱かれるよ
   うな感覚(グルーブ感、一体感というのか)を感じました。私はこの感覚を
   すごく心地よく感じたのですが、この感覚を求めて、つまり、調心(意念)
   して練功するのは進歩の障害になりますか?テキストに『気感は目的にあら
   ず』とありますが、これは一度表れた気感を最上のものと思い込み、それに
   固執して、それより上を見れなくなること避ける為、あるいは、現れる変化
   をあるがままに受け入れなさいということなのでしょうか?しかし、テキス
   トの調心の項には、『ストレスの多い生活であるならば, 楽しい思い出や風
   景を頭に描いてみるとよい』とありますが、この言葉を受けて考えると[自
   分の外界と内界の境目がなくなり大地に抱かれるような感覚(グルーブ感、
   一体感というのか)=楽しい思い出や風景を頭に描く]と、とれなくもあり
   ません。ここに生じる矛盾をどう考えればよいのか分かりません、助けてく
   ださい。私が練功中に感じた自分の外界と内界の境目がなくなり大地に抱か
   れるような感覚は、一種の気感なのでしょうか?』


    ■ 答え ■
   
   答え(1)

   [腰を落とす深さ×練功時間]=効果, の図式は, だいたい正解です。ただ
   し, 腰を低くしても, 歯を食いしばるほど緊張するようではよくありません。
   リラックスして練功することが, 大切なのです。数ヶ月の練功で潜在能力が
   開花するわけではないので,最初のうちは腰を高くして,慣れてきたら徐々
   に低くするのがよいと思います。

   答え(2)
   
   気感は, あるがままにまかせることです。練功を重ねるに従って, 変わるも
   のです。求めず,「あるがまま」です。「楽しい思い出や風景を頭に描く」
   というのは, 緊張がとれない人の場合です。一指禅功の練功中は,姿勢に
   少し注意を向けながら,意識の方はぼけっとしていればいいのです。

  


   ** 購読者コーナ **************************


   □ 質問 「中国の気功事情について」□   
   
   『中国では現在,気功全体がお上から弾圧を受けていると聞きますが本当なの
   でしょうか。法輪功だけの話ではないのですか。法輪功の会員は,中国共産党
   員より多いというので,お上はその影響力を心配したようですが。しかしどう
   して,ほかの気功まで弾圧されなければいけないのですか。中国の気功界はど
   うなってしまったのですか。』(隼人)


   ■ 答え ■
     
   『法輪功による天安門一万人座り込み事件以降の,2000年に「健身気功管理暫
   定法」が施行され,気功団体に対する数々の規制がなされ,気功全体に法の網
   がかけられました。200人以上の気功団体は,体育行政部と警察の認可を受け
   なければならず,気功の練習をする際にもいちいち,体育行政部に15日前まで
   に書類を提出して,許可を受ける必要があります。そんな中で実際に,多くの
   気功雑誌の発行が禁止され,廃刊に追いやられています。しばらくの間は中国
   の気功界には,文化大革命以来の逆風が吹き荒れ,萎縮した状態が続くものと
   思われます。いずれ中国の気功が復活するまで,気功の中心地は日本というこ
   とになります。頑張りたいと思います。』
     

     
   
                         

   ※気功やこのメルマガの内容に関して, ご意見やご質問がありましたら, 是非
   
お寄せ下さい。お待ちしています。
   
    Email aam13920@nyc.odn.ne.jp 編集 正田 竜二
  



      
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        【バーチャル気功空間 気の世界】隔週  
                                   
    発行元: 日本気功倶楽部
   監 修: 天地 一道
   編 集: 正田 竜二


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