並木克敏(天地一道)

「バーチャル気功空間 気の世界」

2001.05.05 創刊




第四章 気と社会
   
(04-08) マスメディアの幻想(2)

煽り,利用し,葬る (No.48)

   

2003.07.07
   


【視聴者参加の討論会】
   
      
   マスメディアによる気功に対する「エゲツない」仕掛けが行われた時期は,オ

   ウムがサリン事件を起こし,超能力ブームを演出したマスメディア自身が,社

   会の厳しい批判に晒されていたときであった。どこの局だったか覚えていない

   が,テレビでは珍しく「気功」の正否を問う視聴者参加の討論会であった。舞

   台には大げさなひな壇状の席が設けられ,右側に気の存在を肯定する者が,左

   側に気功に疑問を投げかける者が並んでいた。しかし「気功」をテーマにした

   討論会で,両者の論議が噛み合わないのは自然で,双方から陳腐な意見が飛び

   交うだけであった。気功は「経験と体験」がそのベースに置かれているので,

   それを伴わない知識は無意味であるのと同様に,共通の体験(修行)なしには

   相互の意見交換は成立しない。それは,最初から判りきったことなのである。

   すれ違いの空しい時間だけが過ぎていく。



【出っ腹の被験者】

      
   議論が一巡した頃,それでは気功師が気を送ると,相手の身体がどのくらい柔

   らかくなるかを検証しょうということになった。具体的には,発功後に前屈さ

   せた両手がどこまで届くようになるかという,よく目にする実験である。事前

   に打ち合わせがしてあったようで,30歳代の生真面目そうな若い気功師が壇

   上から舞台正面に降りてきた。そして,反対側からは同じぐらいの年齢の被験

   者が登場してきた。目に入った瞬間,えっ?と目を疑った,何んだこの身体は

   と。この被験者を見て,局関係者が描いている番組の「狙い」が一瞬にして見

   えた。プロレスラーのように気を寄せ付けないほどの強健な身体だからではな

   い。彼は,身体全体は比較的スマートなのだが,お腹が異常に丸く出っ張って

   いるのである。身体とお腹が,これほどまでにアンバランスな人を街中でも見

   たことがない。局関係者は,そうとう苦心して探してきたに違いない。この若

   い気功師は,被験者が誰であるか知らされていなかったように思う。事前に知

   っていれば,断ったはずである。局関係者は,したたかな古ダヌキのような気

   功師ではなく,生真面目そうな若い気功師を呼んだのである。土壇場で断れな

   いからである。すべてが「ずるく」計算されている。

 

【物理的に前屈は限界のある身体】

   
   ここで読者の方は,マスメディアの「エゲツない」仕掛けを了解したことと思

   う。というのは,いくら相手に気を送ったところで,異常に出っ張った丸いお

   腹が邪魔して,前屈しても発功前と同じ結果しか出ないのである。もともと彼

   は,物理的に前屈には限界のある身体の持ち主だからである。そして,気を受

けても身体は軟らかくならない,「気功に疑問あり」という結論に導かれるこ

   とになる。それにしても,この出っ腹の被験者を選んだ局関係者には,気功を

   絶対に否定するのだという,異常なる執念が見てとれる。灰色では駄目なので

   ある。気功師との接触の多いスタッフであれば,気功の効果は100%ではなく,

   個人差の大きいことを知っているはずである。気の反応に鈍感な人を被験者に

   仕立てれば,それで十分に事足りるではないか。一指禅功の偉大なる闕阿水老

   師の最初のある直弟子でさえ,「吊り手」という秘伝の技を使っても,1cm

   たりとも腕を引き上げられないほどの,気的に鈍感な人もいるのである。物理

   的に前屈に限界がある人を被験者として使うのは,フェアーではないというよ

   り,視聴者を欺く「エゲツない」行為なのである。会場から被験者を無作為に

   数名を選ぶべきであった。



  
【気功の正否は局スタッフのさじ加減】

   
   マスメディアが扱うパフォーマンスとしての「気功」の正否は,それを担当す

   るスタッフのさじ加減一つ掛かっている。視聴者に肯定的な印象を与えるか,

   あるいは否定的な印象を与えるかは,製作者がたった一つの事実を押さえてお

   けばいいのである。それは,気に対して超敏感な人と,超鈍感な人がいるとい

   う事実である。被験者に超敏感な人を集めて表演すれば,視聴者は少なくとも

   驚きの表情を浮かべるであろうし,逆に超鈍感な人を揃えてけば,ひらけムー

   ドになることは間違いがない。かつて超能力ブームを演出したときは,派手な

   パフォーマンスのために超敏感な人だけを選別して集めると共に,ウサギの肝

   臓の一部を切開せずに取り出すなどという,怪しい中国人の「気功師もどき」

   をも動員して大いに煽り,視聴率を上げるために徹底的に利用した。オウムに

   よる悲惨なサリン事件が起こり,超能力ブームを演出したマスメディアは,社

   会の厳しい批判に晒されると一転して否定側に回る。気功に対する報道の理由

   が,視聴率以外には見当たらないのである。マスメディアにとって気功やヨー

   ガは,おそらく霊視などと同様に,芸能界の結婚や離婚の話題と同列に,面白

   おかしく扱われるべきものなのであろう。とすれば了解できる。オウムの影が

   少し薄くなってきた昨今,姿を消していた超能力が再び顔を出し始めている。

           

                     
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        【バーチャル気功空間 気の世界】隔週  
                                   
    発行元: 日本気功倶楽部
   監 修: 天地 一道
   編 集: 森澤 陽子


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