2001.05.05 創刊
(03-11) 気場の応用（その三）
宮本武蔵 剣豪は殺気を感ずる(Ｎo.39)
2002.12.31
【ブチが気場に侵入】
研ぎ澄まされた視覚と聴覚を使って, 日常の音や風景とは異なる気配を感じと
り, そこに尋常でない「殺気」を読み取ることができよう。しかし, 殺気を感
じる五感は, 耳や目だけではない。「触覚」も重要な役割を担っている。触覚
とは, あるものが皮膚に触れて初めて感じるのだから, 離れた相手の動きなど
分かるはずがない, と読者の多くが考えていることであろう。それはこういう
ことでなのである。私と離れた相手の間に「気場」が介在してくるからである。
練功を始めて数分すると, 私の身体の周囲に気場が形成される。気場は, 時間
の経過と共に, 強く大きく成長していき, 前回触れたように, やがて厚いコン
クリートの壁を突き抜け, 隣の部屋にも達するようになる。この気場の中にた
またま人が入ると, 「入った方」は痺れや圧迫感を感じるが, 他方で「入られ
た私」は, 気場という「秩序ある空間」が歪むように感じるのである。
最初の経験は, やはりネコの気場への侵入--であった。我が家に住みついた今の
三毛ネコではなく, 大分昔に飼っていた痩せ気味のブチであった。ある日, お
きまりの練功をしていると, うしろの足元の方で何か動く気配がする。振りか
えって見ると,ブチがあまり美しくもない顔をせっせと洗っているではないか。
洗っている手の動きが, 足に伝わってくる。けれど決して触れてはいない。
【殺気の正体 気場】
この感覚を正確に伝えることは難しいけれど, お風呂に入ったときの感じに近
いように思う。湯船に一人で浸り, 多少熱めの湯も動きが止まると, お湯と身
体が馴染んで何も存在しないような状態になる。そこへ他人が入ってくると,
お湯がかき混ぜられて, 身体に熱いお湯が再び触れて秩序が乱されたかのよう
な感じになる。もう少し分かりやすく言えば, 湯船に二人で入っていたとき,
相手が動けば目をつぶっていても, 相手の動きが誰でも分かる。お湯が動くか
らである。強い気場が形成されると, 動く相手の間にはお湯とは違うが, ある
物質を介してつながりができる。ある物質とは, 電磁波のようでもあり, 静電
気のようでもあり, あるいは, ねばねばした物のようでもあるが, 正確には私
には解からない。やがて修練を積んで名人になると, 練功しているときだけで
はなく, 日常生活の中でも「気場」は形成されるようになる。これが「殺気」
の正体である。日常の中で気場が形成されるようになると, 相手が動くと自分
の身体の周囲にある「気場」の乱れとなって現われるので, 名人には容易に了
解できる。気場は, 修練を積めば積むほどその空間を拡げるので, 名人ほど遠
くの殺気を察知できる。殺気は, 視覚, 聴覚と共に, 気場を介した「触覚」で
も感じていたのである。
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編 集: 森澤 陽子
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