並木克敏(天地一道)

「バーチャル気功空間 気の世界」

2001.05.05 創刊




第2章 潜在能力の開発
   
   
(02-02) 馬歩椿の効果 立つことに秘められた偉大なる生命の底力
(No.18)

   

2002.02.01
   
   

【立つ 「サル」から「ヒト」へ】
  
 
   
「サル」は, 地上に「立つ」ことで「ヒト」になった。「サル」と「ヒト」と

   を分けたのは, この「立つ」という単純な姿勢の違いである。木にぶら下がっ

   たり, 四足で歩いていた森の「サル」が, 草原のサバンナに出て二本足で歩く

   ようになってから「ヒト」になった。数百万年前のアフリカでの人間のドラマ

   の始まりである。「ヒト」は二本足で立つことによって, 両手は移動する機能

   から開放され, 道具を自由に扱うことができるようになった。手や指の自由自

   在な動きは, 脳に刺激を与え, 脳の容積を増大させていった。やがて, 「サル」

   と「ヒト」とは, 大脳新皮質の有無によって決定的な差異を生じさせた。しか

   し「サル」が「ヒト」になった原因は, 脳の発達がもたらしたものではなく,

   二本足で歩くという姿勢の変化にあった。「立つ」という姿勢, ただそれだけ

   のことで「サル」は「ヒト」になったのである。「たかが姿勢, されど姿勢」

   なのである。こうして, 立つという姿勢の中に「ヒト」の本質が, 宿ることに

   なる。

   

   
【生活慣習の変化と身体的変化】


   最近, 若い人の間で流行ったものは, その多くが健康にとって好ましくないよ

   うにみえる。厚底ブーツ, 顔黒, ヘソ出しファッション, そして相変わらずの

   ダイエット。「サル」が立つことで「ヒト」になったのであれば, 若者の間で

   急速に変わりつつある生活慣習が, 人体に影響を与えないわけがない。歯の噛

   み合わせひとつとっても, 日本人の将来を展望したとき, ゆゆしき問題を提起

   している。今の若者たちは, アタリメのような硬い食物を嫌い, ポテトチップ

   スのごときあまり噛む必要のない柔らかい食物へとシフトした結果, 顎を退化

   させ極端に小さくしてしまった。このことが, 噛み合わせの悪さの主な原因と,

   歯科医師は指摘している。噛み合わせの悪さは, 口の中だけの話しだけではな

   く, 肩こりに限らず, 頭痛、腰痛、耳鳴り、生理痛へ及ぶという。このように

   人間の身体は, 有機的に構成されているために, ある部位の故障が次々と他の

   部位へと連鎖していくことになる。一つの生活慣習の変化が, 身体を根本的に

   変えてしまうこともあり得るのである。ということは, 正しい姿勢で「立っ」

   たとき, 身体にどのような好ましい効果があるのかは, 漠然であつても想像さ
   
   れよう。
   
   

   
【「立つ」 調身の基本】
   

   気功のトレーニング法には, 三調技術といって「調身・調息・調心」の三つが

   あり, 「調身」は正しい姿勢, 「調息」は呼吸法, 「調心」は意識の持ち方で

   ある。気功の入門書には, 調身・調息・調心の三者が, 気功にとっては絶対不

   可欠なものとして扱われていることが多い。この三者は, 甲乙つけがたくどち

   らも必要なものだと。しかし, 気功には三千流派( 一説には一万流派ともいわ

   れる)があるのであって, 狭い世界を見てそう決め付けられたのでは, 気功の

   本質から外れることになろう。なぜなら, 私共の流派は, 調息も調心もなく

   「調身」のみでトレーニングしているのである。「調身」だけの気功だからと

   いって, レベルが低いかといえばそんなことはない。極めれば, 世界のどこへ

   行っても立派に通用するのである。とすれば, 気功が気功として成立するその

   本質は, この「調身」にこそあるのではないか。

   

   
【「上虚下実」 気功の基本原理】
   

   調身とは, 身体の形(型)やその動きのことであるが, 調身は流派によって千

   差万別である。動功と静功では違うのは当然だが, 同じ動功でもたとえば, 今

   手元にあるNHKk「気功専科」の中の八段錦と宮庭二十一式健康法でも, その

   動きは全く違う。かつて中国伝統医学(中医学)の基本原理を「経絡を刺激し

   て気血の流れを促進させる」ことにあると書いたが, 調身の場合にもその種の

   原理原則は存在するのであろうか。あまりにも多種多様なため, 共通する原則

   など無いようにみえる。しかし, それらの底流にはしっかりと, ある共通項が

   存在していたのである。すべての気功に共通する調身の原則は, 上半身の力を

   抜き下半身を充実させるあの「上虚下実」の姿勢にあった。八段錦と宮庭二十

   一式健康法でも, 身体や手足の動きは違っていても, 「上虚下実」の姿勢に変

   わりはない。この「上虚下実」の姿勢こそが, 調身の原則であり, かつ気功の

   基本原理なのである。「立つ」ことで「サル」から「ヒト」になった人間は,

   いつしか自分を幸せにする最も相応しい姿勢を発見し, 獲得したのである。



   
【立てば命の泉湧く】
   
   
   「上虚下実」と一口に言うけれど, 試してみれば分かると思うが, そう簡単な

   ものではない。私も入門当時には, 力を入れたほうが効果があるのではないか

   と, 伸ばした指に力を入れたものだ。さて「上虚下実」の姿勢のどこに, 人間

   を幸せにする秘密が隠されているのだろうか。もう一度「上虚下実」の姿勢を

   点検してみよう。「下実」とは, 膝を曲げ腰を落とすことで, 全体重を太腿四

   頭筋にかけることになる。この姿勢を保っていると, やがて気血は下半身から

   上半身へと上がり, 全身の気血循環が始まる。上半身に上がってきた気血は,

   徹底的に力を抜いた「上虚」の姿勢をとることで, スムースに五臓六腑を巡り

   そして身体の隅々まで行き渡たる。そして, それが全身を滋養することになる。

   「上虚下実」とは, 全身に生命維持の源である気血を循環・促進させ, 健康を

   保つ知恵なのであった。
   
  
 
  
 【天がヒトに与えてくれた「恵み」】
   

   「ヒト」は, 立ち上がり二本足歩行をすることで得られものは, ものすごく大

   きかったことは言うまでもない。動物界の頂点に君臨したのだから。けれども

    立つことでハンデイを背負った部分も少なくない。立つとは, 重力に逆らうこ

   とを意味している。それは, 人体のある特定な部位に負担をかけることになり,

   四足動物にはない宿命的な障害を背負うことにもなった。これと同様に「立つ」

   ことによって, 気血のスムースな循環は阻害された。重力は, 足から上半身へ

   気血が昇るのを引き止める。これは西洋医学的にも, 血液が足から心臓に送り

   返される仕組みを想像してもらえば, 容易に理解されよう。

   実は, 気功の基本原理である最も重要な「上虚下実」の姿勢は, 「サル」が

   「ヒト」になったときに人間に背負わされた障害を, 矯正するための「知恵」

   だったのである。「上虚下実」は, 人間の誕生という生物の進化の歴史に係わ

   る, 壮大なドラマを垣間見せてくれる。天がヒトに与えてくれた「恵み」を拒否

   する理由はどこにもない。自然体というのは, 何もしないことではなく, 自然界

   に対して柔軟に適応することで得られた知恵の総体なのである。




*** 会員からのメッセージ ********************


『風邪を引かなくなりました』(神奈川 SSさん♀)

   『ここ十年の間, いつも冬になると風邪を引くのが, 一年のスケジュールとなっ
  
   ていましたが, この冬は今のところ風邪の兆がありません。練功を始めてから

   六ヶ月になりましたが, 日常の疲れもあまり感じられなくなりました。私は鈍
 
   いせいか, 特別な気の反応はありません。それでも体調の変化は実感できま

す。これからも練功を続けていきたいと思います。』 


   ** 購読者コーナ *************************
   

  
 □質問□
   
   『前号に「物を出しり消したりする超能力というのは, すべて例外なくマジッ
   
  クである」と書いてありましたが, 雲を消してしまう人たちはどう考えたらいい

  のですか。彼らは台風の進路さえも変えてしまうといいます。」(福岡 Kさん)
   
   
   ■解答■
   
   なんと答えていいのか悩むところてす。気象学や物理学を少しでも勉強してい
  
 ただきたいと思います。たとえたとえ雲を消せたとしても, そういう人たちとは
  
  「気功」に対する姿勢が, 根本的に違います。ちっぽけな人間が, 大きな自然を
 
   変えようなどとは考えてもいません。それは科学の仕事です。私たちは, 大きな

   自然にいかに順応するかということを考えるだけです。

   


   ※気功やこのメルマガの内容に関して, ご意見やご質問がありましたら, 是非
   
お寄せ下さい。お待ちしています。
   
    Email aam13920@nyc.odn.ne.jp 編集 森澤陽子(准指導員)
  



      
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        【バーチャル気功空間 気の世界】隔週  
                                   
    発行元: 日本気功倶楽部
   監 修: 天地 一道
   編 集: 森澤 陽子


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■私の気功の世界■


ネット通信教育 「一指禅功日本 バーチャル気功道場」

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「一指禅功日本 東京・小岩リアル気功教室」

http://katutoshinamiki.suichu-ka.com/



YouTube 「一指禅功秘術 吊手術」

https://www.youtube.com/watch?v=W5J6RmbjpQI&feature=youtu.be


Twitter 「連載 気を考える」

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■私の趣味の世界■



すまい&町並み 今昔物語

「第一章東京下町風景への旅」

「第二章同潤会アパートへの旅」








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