監修・解説 並木克敏


右脳で知る身体知としての気功 そして私の小さな旅


2025.10.30 創刊 月刊発行






         《 序文 》

    気功は、右脳で感じる身体知の実践である。思考を離れ、馬歩椿と五指の

    動きに身を委ねることで、言葉を超えた感覚が立ち上がる。身体知とは、

    世界と響き合う知性であり、気功はその扉を開く技法である。そして人と

    人との間を言葉ではなく, 右脳の働きで直接的に魂と魂が結び付き, 我が

    家の庭の小窓から, 追体験を通じて遥か昔の古事記のシーンが蘇り, 野菜

    作りと庭木剪定というありふれた日常から, 縄文時代の世界の扉が開かれ

    る。そんな不思議な世界を描写してみたい。

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「右脳で知る身体知としての気功」では, 気功の鍛錬をしたことのない初

    めての読者も対象としているので,「バーチャル気功空間 気の世界」で

    すでに描写している一指禅功の初歩的な情報と重複することをお許しいた

    だきたいと思う。


   第1章 右脳で知る身体知としての気功 そして私の人生の小さな旅 (01)
                           目次 (2025.10.30〜)

    (01-01) はじめに 「知覚の現象学」と気功の接点を概観する
    (00-02) メルロ=ポンティの「知覚の現象学」と気功の身体知
    (00-03) 一指禅功という気功の歴史 1500年の重み
    (00-04) 一指禅功という気功の特徴 馬歩椿の姿勢
    (00-05) 一指禅功という気功の特徴 強烈な気感が生じる


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   ■右脳で知る身体知としての気功 そして私の人生の小さな旅 (01) 予定

   以下の項目は現時点で考えている構想であり 私は走りながら考えるタイプ

   なので, 大きな変更も脱線もあり得ることをご承知願いたい。こんな順序

   で
進めていきたいと思うが, 多分, この14の項目で三年ほどかかるかも知

   れ
ない。


   ■ はじめに 「知覚の現象学」と気功の身体知についての概観

   ■ 気功における身体知 メルロ・ポンティの「知覚の現象学」

   ■ 一指禅功という気功の歴史と特徴

   ■ 右脳で知る身体知としての気功

   ■ ジル・ボルト・テイラー博士と脳出血 右脳で知った世界

   ■ 13年間, 痴呆の母親を介護する過程で開いた右脳の世界

   ■ 我が家の小さな庭から古事記の世界が見える

   ■ 野菜作りと庭木剪定から縄文の世界の扉が開く

   ■ 和辻哲郎 「風土」について 50年前に読んだ名著

   ■ 日本の造形文化 日本庭園と茶の湯

   ■ 西洋の幾何学式庭園 ベルサイユ宮殿

   ■ 右脳の日本文化 どうして日本人は右脳が発達したのか

   ■ 縄文の世界 第四の本能=死への恐怖 そして再生

   ■ 縄文の世界 半栽培採取による世界でも稀な定住生活


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       第1章 右脳で知る身体知としての気功 そして私の人生の小さな旅 01

        (01-01) 【はじめに 「知覚の現象学」と気功の接点を概観する】
          
              「メルロ=ポンティの「知覚の現象学」の世界より」

                     2025.10.30 (No.001)


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   【モーリス・メルロ=ポンティの身体知についてのイメージ】

   思考よりも先に、私たちは世界に触れている。

   風の冷たさに身をすくめ、土の匂いに記憶が揺れる。

   それは言葉になる前の、沈黙の知—身体が世界と交わる最初の感覚。

   モーリス・メルロ=ポンティは語る。

   「我思う、ゆえに我あり」と唱えたデカルトの二元論に静かに異を唱えながら。

   彼はこう言う—「私は考えるよりも先に、世界の中で行為できる存在である」と。

   つまり、私たちはまず身体で世界を感じ、そこから意味が芽吹くのだ。

   赤ん坊が自らの手を握り、舐めるとき、その小さな身体は世界との最初の対

   話を始めている。

   それは受動的な反応ではない。

   身体は、世界に触れ、世界を編み、世界を創る。

   知覚とは、身体を通じて世界と交わる能動的な詩である。

   このような知は、理論では語り尽くせない。

   それは「暗黙知」とも呼ばれ、

   感覚の奥底に沈み、動作の繰り返しの中で育まれる。

   気功の動作, 茶道の所作、武道の型、舞の一瞬——

   それらはすべて、身体が語る言葉なき知識の結晶である。

   メルロ=ポンティは、身体を「意味を創出する存在」と呼んだ。

   身体知とは、知ることの根源であり、

   世界と私のあいだに流れる、静かで力強い川のようなものなのだ。

   「私は身体を持っているのではなく、私は身体である。」



   【「知覚の現象学」と一指禅功における身体知】

   「右脳で知る身体知としての気功 そして私の人生の小さな旅」は, この偉大

   なるフランスの哲学者モーリス・メルロ=ポンティの「知覚の現象学」における

   身体知について概観した後に, それを下敷きにして気功における身体知に

   ついての体験の描写に移る。私は 「一指禅功」という少林寺の気功だけを,

   三十歳代後半から現在まで, 殆ど中断することなく四十年間ほど鍛錬を続け

   てきた。一指禅功という気功は, 馬歩椿という姿勢のまま, 意念も呼吸法を使

   うことな く, 五指を動かすだけなので静功に近い。それ故に一指禅功は,太

   極拳などの動功と較べて気感(気の反応)が極めて強い。しかも気感は多種

   多様である。この言葉にならない気感という現象を, 誰もが経験したことのあ

   る類似の感覚を引き合いに出しながら詳細な説明を加えていく。そして最後

   に, これらの気感を手掛かりにして, 一指禅功における功法の仕組み(システ

   ム)を解明していきたい。

   ★一指禅功という気功については, 次回に詳しく説明する。


   【右脳で見える私の人生の小さな旅】

   左脳は言葉や論理的な情報を処理し, 右脳は五感を通しての感覚的な情

   報を処理する。気功は, 言葉にならない気感という感覚の世界を, 右脳で扱

   う。そのために, 長年にわたり気功の鍛錬を続けていくと, 右脳が鍛えられて

   左脳よりも右脳が優位になる。もともと私は, 過去の出来事をイメージとして記

   憶しているので, 右脳が優位なタイプのようである。そんな私がある時期, 気

   功の鍛錬と痴呆になった母の介護, それに野菜作りと料理などと, 右脳だけ

   を使う生活を続け, ふと気づいたらこの世界が右脳でも感じるようになってい

   た。そんな体験から, ジル・ボルト・テイラー博士が, 脳出血により左脳のダメ

   ージを受け, 右脳で感じた世界の描写に大いに興味をもった。テイラー博士

   の壮絶な体験を通して, 右脳だけで感じた世界が, 私のような脳科学にも疎

   い人間にも, 手に取るように理解できたように思う。第三者がカルテを外から

   覗いて判断するのではない, 貴重な生の情報である。右脳が優位になった

   私の脳が感じた世界は, 蟻の姿を肉眼ではなく, 虫眼鏡でのぞいたとき, 餌

   を咥えている別の蟻の顔が映る。それは遠くから一歩近くへと踏み込んだと

   きに見える別の世界であった。そんな右脳優位の私が感じた世界を, 目次に

   掲載してある項目に沿って語っていこうと思う。



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   【右脳で知る身体知としての気功 そして私の人生の小さな旅】月1回発行
   
   発行元: 日本気功倶楽部
   編  集: 並木 克敏 (代表)
   
   
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