並木克敏(天地一道)著

「バーチャル気功空間 気の世界」

2001.05.05 創刊








第7章 一指禅功の基礎知識




(07-05)気功的鍛錬法(2)

気は生身の身体を介して発現


2006年06月04日 (No.81号)




【 「気とは何か」という問題 】


   前回のメールマガジン(07-04気功的鍛錬法)を読み返してみると, メルマ

   ガ配信の期日が過ぎて見切り発車しため, 文章に整合性が無いばかり

   か, 表現の上でもかなりの混乱があって, 読者の方には理解し難いので

   はないかと思われる。いつもそうなのだが, 「気とは何か」をテーマにして

   書こうとすると, 筆がまったく進まないのである。その理由を考えてみると,

   一つには私の力量不足にあることは間違いないのだが, それ以上に「気

   の存在と正体」が, 今だにはっきりしていないところに, 最大の原因がある

   と思える。誰でも「気功」について語るろうとするとき, どうしても「気の存

   在と正体」に触れないわけにはいかない。なぜなら, 「気」は今もって不

   可解で不思議な存在なのだから, せめて読者は仮説でもを聞きたいと願

   うからである。ところが「気の正体」は不明なのだから, 書き手の方は「気

   の本質」についてまともに書きたくても, どこを探してもネタが無いのであ

   る。たとえば, 本場の中国で, 「気」はどのように捉えられているか, ほん

   の少しだけ覗いてみよう。古代中国の哲学では, 「自然界のすべての物

   質は, さまざまな微細な気から構成され, 気が最も基本的な物質であって,

   すべての事物は気の運動変化によって産生される」(神戸中医学研究会

   編著「基礎中医学」1995)と考えた。同様に中医学でも, 「気は人体を構

   成し, 生命活動を維持する最も基本的な物質である」とされ, さらに現在

   では, 「気とは, 人間の体内に存在する精微物質による一種のエネルギ

   ー」のようなもので, 「このエネルギーは体内で産出, 運動, 変化すること

   ができる」と考えられている。すなわち, 現時点で中医学の立場から「気」

   を定義するとすれば, 「気とは, ある種のエネルギーを内包させた微細な

   物質」と云うことができる。しかしながら, どのような種類のエネルギーなの

   か, どのような微細な物質なのか, 明らかではない。中医学でも今なお,

   「気の存在と正体」は正確には捉えられておらず, あくまでも仮説の域を

   出ないのである。



【 「気」は今だ正体不明 】


   中医学と同様に, 現代の先端科学をもって, 「気の存在と正体」をすくい

   上げようとしても, 「気の本質」は, 指の間からぽろりとこぼれ落ちてしまう

   のである。気功師を被験者として, 現代科学の先端技術のすべてを駆使

   し, 電磁波や静電気, 光や音など諸々の現象を測定したとしても, それら

   が「気」の一つの断面を現しているものなのか不明だし, あるいは, 測定さ

   れた現象を合計したものが 「気」であるかも分からないのである。といわけ

   で, 「気とは何か」というテーマは, ちょっとした科学的精神の持ち主にと

   っては気が重く, できれば避けて通りたいのである。あえてこのテーマを,

   真正面から取り上げようとすると, 出口なしの迷路に引きずり込まれ, 時

   間をただむなしく浪費することになる。しかしながら, ホームページの中に

   は, 一見すると科学的でかつスマートに, 宇宙のビッグバンを前提として,

   「気とは, 生命の源=宇宙エネルギー」であると説く人もいる。『気は宇宙

   に充満している細かな微粒子で、万物を形成しているものです。宇宙は、

   150億年前のビッグバン(大爆発)により始まりました。その瞬間に真空の

   中から膨大なエネルギーが作られ、爆発によって宇宙にエネルギーが

   撒かれました。そのエネルギーにより1000億の銀河ができ、1つの銀河

   に1000億の星が作られていると言われています。こうしてできた宇宙は、

   エネルギーの宝庫であり、生命の根元です。この源のエネルギーを東洋

   では「気」と言います。』 解ったような気分にはなるが, 本当のところは何

   も分からないのである。ちょっとした科学的精神の持ち主であれば, この

   種の曖昧な文章は, 書く気にはなれないと思うのだが。現時点で云える

   ことは, 「気は今だ正体不明で, よく分からない」というのが, 正直な答え

   である。




【 「気の現象」 気は生体を介して発現 】


   前回のメールマガジン(07-04気功的鍛錬法)を読み返してみると, メルマ

   現時点では科学的・客観的にも, あるいは中医学的にも, 「気の存在と正

   体」が正確かつ厳密に捉えられてはいないのだから, 私たちが「気」につ

   いて語るとき, 「気とは何か」という本質論を避けて, 誰もが目にすることが

   できる「気の現象」から始めるのが正解である。というのは, 「雷の正体」を

   知らなかった時代にも, ゴロゴロ〜ピカリという「雷の現象」は, 誰もが目に

   していたからである。ニュートンは, 「リンゴが木から落ちるのを見て, 万有

   引力の法則を発見した」のであって, 「万有引力の法則を発見したから,

   木からリンゴが落ちた」のではない。 あるいは, 「火の無いところに, 煙は

   立たず」とも云えるのである。いつの時代にも, 「現象は科学に先行する」

   のである。読者の多くは, テレビや活字などで, 武術気功や医療気功に

   よる「気の現象」に, 半信半疑ながらも触れたことがあると思われる。「気の

   存在と正体」は今なお不明ながら, 「気の現象」は, 多種多様な形で私た

   ちの目の前に姿を現しているのである。私の体験してきた些細な「気の現

   象」については, このメールマガジンのメインテーマでもあるので, ホーム

   ページ「バーチャル気功道場」のバックナンバーを参考にしていただきた

   い。気功道場へ入門した頃の初歩的な感想から, 外気功へ進んでからの

   内気外発 (気を出す) の体験までを, かなり詳しく書いたつもりである。さ

   らに, 広範囲な「気の現象」を知りたい方は, 湯浅泰雄著 「気とは何か・

   人体が発するエネルギー」 (NHK Books 613 1991) をお勧めしたい。こ

   の本では, 気功師が「気」を発したときの状態を, 「(2)人体内部の「気」の

   システム」と, 「(3)人体外部の「気」のエネルギーの場」の両面から分析

   している。湯浅氏は哲学者の立場から, 「気」を科学的に客観的に捉え,

   私は実践者の立場から, 「気」を感覚的に主観的に捉えている。

 

【 気は鍛錬によって発現 】


   しかしながら, 「気の現象」を取り上げるとき, 湯浅氏の場合も同様だが,

   分析の対象となっているのは, あくまでも「人体」に現れる「気の現象」で

   あって, 自然界における「気の現象」ではないということである。誰もが目

   にする雷の放電現象のように, もし「気の現象」が客観的な形で, 自然

   界に姿を現したとすれば, 曖昧さもなくすっきりとしていたことだろう。とこ

   ろが, 人間という生身の生体を介して 「気の現象」が現れるということは,

   雷のような物理現象ほどに単純で明快な話ではないのである。鉄は鉄

   であり, 金はいつまでたっても金である。しかし, 38億年に誕生した生命

   体は, 絶え間のない進化を続け, そして数度にわたる絶滅の危機を迎え

   ると, その度に姿かたちを変えながら, 今日に生き残ってきた。私たち生

   命体は進化の過程で, 鉄や金などの物質とは違い, 外界に対する驚く

   ほどの柔軟性や適応力を身に付けてきたのである。たとえば, 常識では

   考えられないけれど, 人間の脳は, 一冊の電話帳を丸ごと暗記してしま

   うほどの, 能力とキャパシティ(容量)がある。驚くべき能力である。このよ

   うに,人間には日常的に意識できないけれど, まだ表に出てこない多くの

   潜在的な能力や可能性が秘められているのである。その一つが気功で

   あると云える。気功を鍛錬してきた人が, 外気導引の技を使ったとき, 彼

   が発功 (気を出す) している「気の現象」は見えないけれど, 相手は意外

   と簡単に前後左右に動く。ところが, 気功を鍛錬していない人が, 同じ動

   作を真似したとしても, 相手は微動だにしないのである。少なくても気功

   においては, 多くの潜在的な能力は, 鍛錬することによってのみ花開くの

   である。それが生命の進化の過程で得られた, 人間の柔軟性や適応力

   であるかも知れない。




  
 ** 会員からのメッセージ ***********************


『 頭痛が消えました 』 (東京 一姫♀)

   「はじめてお便りします。私は若い頃からの頭痛持ちで, 最近まで週に二
   三度は悩まされてきました。気功には興味はあったのですが, 食わず嫌
   いのため横目で見るだけで, いつも通り過ごしてきました。今回, 頭痛を
   治そうと, 清水の舞台から飛び降りる覚悟で, バーチャル気功道場に入
   会しました。馬歩椿の姿勢は, 私にとって決して優しいものではありませ
   んでしたが, 第三巻まで我慢して続けていくと, ある日ふと気がつくと不
   思議なことに頭痛が消えていました。頭痛は治るというより, 消えるという
   ほうが実感に近いですね。今では頭痛はほとんど消えました。とても感
   謝しています。今度は外気功に挑戦したいと思っています。』

   
   『 外気導引ってありなんですね 』 (盛岡 白熊♂)

   『こんにちは。僕は風邪を引きやく虚弱気味なので, 健康のために気功を
   始めました。気で人が動くのをテレビで見て, いつも「やらせ」だとばかり
   思っていました。それなので, 外気導引にはあまり興味がありませんでし
   た。第八巻の中に, たまたま外気導引法の解説があったので, だまされた
   と思って友達にやってみました。最初のうち友達はけげんな顔をしていま
   したが, しばらくすると胸が温かくなってきたと言い, 手の動きに合わせる
   ように少しだけ動きました。僕でさえ動くのだから, テレビでやっている外
   気導引は, 「やらせ」でないことを納得しました。』


  ** 購読者コーナ *************************


   
□ 質問 「科学者の言葉」□   

   『前回のメルマガの中で, 「有名な科学者の言葉でさえ, ときには有害な
こともある」とありましたが, 意味がよく飲み込めません。もう少し分かりや
   すく説明をしてもらえないでしょうか。ちょっと気になります。』
   (名古屋 SOS♂)


   ■ 答え ■

   『言葉が少し足りなかったようです。たとえば脳波を測定をしている科学
   者が, その結果を公表されるのは, 気功関係者だけでなく, 他の多くの
   人にとっても大変参考になります。しかし, 気功のトレーニングをしたこと
   もない, その科学者が, 気功の鍛錬にまで立ち入ってくると, 偏差など
   有害な作用を及ぼすこともありうるのです。気功の鍛錬には, 守らなけれ
   ばならない一定のルールがあり, ものによってはやってはいけない絶対
   のタブーもあります。気功はラジオ体操とは違うのです。』




 ※気功やこのメルマガの内容に関して, ご意見やご質問がありましたら, 是非
   
お寄せ下さい。お待ちしています。
   
    Email aam13920@nyc.odn.ne.jp  編集  正田 竜二
  



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【バーチャル気功空間 気の世界】月刊
                                   
   発行元: 日本気功倶楽部

監 修: 天地 一道

編 集: 正田 竜二


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