並木克敏(天地一道)著

「バーチャル気功空間 気の世界」

2001.05.05 創刊









第七章 一指禅功の基礎知識
   




(07-04)気功的鍛錬法(1)

気は生身の身体を介して発現


2006年05月13日 (No.80号)




【 まえがき 】

   
   今回のメルマガの配信が, 大幅に遅れてしまったことに, まずはお詫び

   を申し上げたい。実は, 文章を書き始めたのは三週間以上も前で, 「気

   とは何か」という大テーマを真正面にすえて, なんとか中央突破できな

   いものかと, 乏しい知恵を絞って挑戦してみた。当初の構想は, 西洋医

   学的な身体観「血液と血管」と, 東洋医学的な身体観「気と経絡」の二

   つを俎上にあげて, それぞれを比較検討する予定であった。ところが,

   いくつか視点を変えながら, 「血液と血管」と「気と経絡」の比較を通し
   
   て「気とは何か」についての説明を試みたが, どれも文章の三分の二ほど

   を書いた段階で行き詰まり, 先へ進むことができなくなってしまった。ど

   うしたわけか, 前後の文章のつながりで, どうしても整合性がとれないの

   である。どこに問題があるのかと思案しているうちに, 一週間が過ぎ, そ

   して二週間が過ぎ去って行った。何事も詰まったときには焦らず, 「ぼ

   〜っと」しているのが一番と, 庭に咲いている温州みかんの小さな白い

   花を見つめていると, 不覚にも, 前提そのものが間違っていたことに気

   付いた。というのは, 「気とは何か」を真正面にすえたものの, 「気」の
   
   正体について, 中医学による解釈では, 雲を掴むような話なので, 分かっ

   たような気にはさせるものの, 客観的・科学的に納得できるものではな

   いし, また, 近年になって行われた科学的な実験によっても, 「気」の全

   体像を明らかにすることはできなかったからである。伝統的な中医学で

   も, 現代科学でも明らかになっていない「気」の正体を, 真正面から, し

   かも言葉だけで, 解き明かそうという試みが, そもそも間違っていたの

   である。とすると. 気功を経験したことのない人に, 「気」はどのように
   
   説明すればよいのか。以下の文章は, 私の悪戦苦闘と試行錯誤の結果

   の産物である。読者が「気」を考えるうえで, 多少とも参考になるのでは

   ないかと思える。



【 西洋医学的な身体観 血液と血管 】


   人間の身体を模式的に見るならば, ヒトの外観を形作っている骨格や筋

   肉, これに呼吸・循環・消化など生命活動の基本を司る五臓六腑と, 全

   身の活動を調整する司令塔としての脳が加わる。さらに, 身体の個々の

   パーツがバラバラに活動するのではなく, 緊密な関係を保った有機体と

   して働くためには, 血管, 神経, リンパの各組織が, 全身にくまなく張り
  
   巡らされている必要がある。これらのどれもが必要不可欠な存在であり,

   たとえその一つでも故障したりすると, 生命維持がかなり難しくなってく

   る。しかしながら, 生命活動の根底をなしているのは, 全身の隅々までに

   張り巡らされた血管と, その中を絶えることなく流れ続ける血液であろ

   う。血液は, 赤血球, 白血球, 血小板, リンパ球, そして残りの6割は液

   体水分の血漿からなっている。これら血液の成分には, 侵入した病原微生

   物や異物を攻撃したり, 出血を止めたり, あるいは体温を調整したりする

   働きがあるけれど, 血液の最も重要な役割は, 全身にある60兆個の細胞

   の一つ一つに, 生命維持に必要な酸素と栄養分を与え, そして二酸化

   炭素と老廃物を回収することである。 脳は酸素が断たれると, 数分後に

   死滅してしまうが, 同様に60兆個の細胞も, 酸素と栄養分の補給なしに

   は, すべてが命の終わりを迎えてしまうのである。



【 東洋医学的な身体観 気と経絡 】


   人間は, 鼻から酸素を吸って, 二酸化炭素を吐き, 口から食料を摂って

   尻から老廃物を出す。この生命の基本的な営みが, 身体を形作る60

   兆個の細胞の一つ一つにいたるまでも, 休むことなく続けられている。

   酸素を吸って, 二酸化炭素を吐き, 栄養分を摂って, 老廃物を吐き出

   す。この個々の細胞の営みは, まさに血液と血管を媒介として行われて

   いる。血液の正常な流れこそが, すべての細胞に命の源泉となる酸素

   と栄養分を供給しているがために, 血液は, あらゆる生命活動の根底を

   なしているのである。血液の流れが止まったとき, それがすなわち生命

   体の死である。脊髄に損傷を受け, 不幸にも下半身マヒし感覚が失わ

   れたたとしても, 血液が流れている限り, 肉体は生き続けることができ

   るのである。

   解剖学的な血液と血管から離れて, 話を中国伝統医学に移すと, 気功

   には, 血液や血管とは別に, 「気と経絡」という独特の概念がある。 中医

   学によれば, 「経絡」とは, 「血管」と同様に全身に張り巡らされた「気」
  
   の通路で, その中を流れる「気」は, 「血」と同様に全身に栄養を与える働

   きがあるとされている。とするならば, 人体は「血液や血管」と共に, 「気
   
   と経絡」によってもまた, 栄養を供給されているのであり, 私たちは二重の

   システムで守られていることになる。ところがである, 私の知る限りでは,

   「気とは何か」という設問に対して, 気功を経験したことのない人が納得

   できるほどの, 客観的な答えを出した人はいない。というのは, 「気の正

   体」を解明しようと, 世界中の科学者たちが, 先端の科学技術を駆使し

   て, 人体実験を重ねているけれど, 気の全体像は今だ見えてこないの

   である。現時点において, 「気」(すなわち生命)のすべてを解明できるほ

   どに, 現代の科学は進んではいないということである。たとえば, 生物の

   未来に危機的なほどの影響を与える, ごく微量な「環境ホルモン」を, 現

   代人が測定できるようになったのは, つい最近のことだからである。現

   代科学というのは, すべてに万能ということではなく, ある分野では意外

   なほどお粗末なのである。  
 
 
 
  
 【 気の現象 気は生身の身体を介して発現 】


   「環境ホルモン」は, その測定単位が, 一億分の一から一兆分の一にな

   ったとき, それまで人体にはほとんど影響がないと考えられてきたものが

   初めてその底知れぬ恐ろしさを見せたのである。「気」も同様に, 現在の

   科学技術がより高度化し, あらゆる物質の測定が可能になったとき, 「気

   とは何か」を客観的に説明できるようになるかも知れない。しかしながら


   「気」が実体のない絵空事だけでは, 四千年余の長きにわたり, 人々を

   惹きつけておくことはできなかったであろう。「気」は, 科学的に測定さ

   れるはるか以前から, 説明のつかない不思議な現象として, 断片的である

   が, その全体像の一部分を垣間見せてきたのである。それも, 人々の前

   に現れる「気」の現象は, 「環境ホルモン」のように, 地球上に客観的に

   存在する物質としてではなく, 生体を介して姿を現してきた。「気とは自

   然宇宙に浸透する生命エネルギ−である」という解釈に, 多くの人は異

   論のないことだと思うが, 山の中で客観的に存在する, 自然の「気のエ

   ネルギー」を測定したという話を聞いたことがない。人を動かす「外気導

   引」や, 自分が動く「自発動功」など, 人々が目にする「気」の現象は,

   実際には, 人間という生身の身体を通して現れたものである。現時点で正

   体不明の「気」を語るとき, 「気」そのものを問題にするのではなく, 生

   身の身体を通して現れた「気」の現象に注目するしかないのである。しか

   もこの「気」の現象は, 生身の身体を, 気功法に従って鍛錬することでし

   か現れてこないのである。気功は, 単なる知識の産物ではなく, 長い年月

   をかけて試行錯誤を繰り返しながら, 多くの人々の手で練り上げられて

   きた心身の鍛錬法だからである。気功は一に鍛錬, 二に鍛錬であり, 鍛

   錬を伴わない気功の知識は, あまり意味がないばかりでなく, 有名な科

   学者の言葉でさえ, ときには有害なこともある。



   ** 会員からのメッセージ ***********************


『 少しだけ気感あり 』 (愛知 M.T♀)

   『配布していただいた気功を早速実施しています。今、立禅をやっております
   が5分くらい経つと足がガクガクしてしまいます^;10分続けるのがやっととい
   うところです。でも嬉しい効果が。まだ始めて1週間くらいですが、ゴム風船の
   ような気を感じるようになりました。気功をやってる, という感じがして続け
   る励みになりますね。この気功道場は自分のペースで進めていけるので非常に
   いいですね。私に合っています。これからもよろしくお願いします。』


『気功は一生かけて修練するもの』 (HAさん♂)

   『外気功上級の受講を申し込みますので引き続きよろしくお願いいたします。
   いよいよ上級まできたのかという思いと今のままで上級に進んでいいのかとい
   う思いの間で気持ちが揺れています。ただ、よく考えれば3年や4年の修練で
   そんなにすごい技を獲得できるはずがないという気持ちもあります。気功は一
   生て修練する価値あるものという気もしています。一生の中の1年、2年、中
   級や上級もひとつの通過点なのではないので。まり長い期間が必要だと思わせ
   ると、意気阻喪させてはいけないので、いくつかのクラスに分けながら会員を
   導いてくれているのではないかというような気もしています。まだまだ小さな
   小さな反応の積み重ねですが、いつか大きく実をつけられるという希望も与え
   てくれています。あらためて、引き続きよろしくお願いいたします。』




 ※気功やこのメルマガの内容に関して, ご意見やご質問がありましたら, 是非
   
お寄せ下さい。お待ちしています。
   
    Email aam13920@nyc.odn.ne.jp  編集  正田 竜二
  



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【バーチャル気功空間 気の世界】月刊
                                   
   発行元: 日本気功倶楽部

監 修: 天地 一道

編 集: 正田 竜二


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