2001.05.05 創刊
【突然知る心肺機能の衰え】
病気になってしまってから治そうとする努力と,病気をしないために毎日少し
ずつ身体のためになることをやるのとでは,そこにケタ違いの差があることは
誰でも承知しているはずである。たとえば,熟年になると喫煙の習慣がなくて
も,身体の老化や運動不足などによって徐々に心肺機能が低下してくる。家に
閉じこもりがちな熟年者は,たまの外出で駅の階段を上った瞬間,ある日突然
に心肺機能の衰えを知ることになる。すぐそこにあるホームまでいっきに登れ
ないのだ。この息切れと動悸。まだ若いと思っていたのに,こんな簡単な動作
ができなくなっていたのだ,とショックを受けるという。これは,退職した男
性の口からよく聞く話である。粗大ゴミとなってゴロゴロと一日を過ごしてし
まう熟年男性が経験する人生後半の一つの事件である。男性と較べると女性の
場合には,洗濯,掃除,買い物,炊事と日常的に有酸素運動をしているので,
除々に衰えることはあっても,身体の衰えを突然に宣言されることはないよう
に見える。しかしながら,心配することなかれ。心肺機能の低下は,比較的簡
単に回復することが可能である。特別に重い病気がなければ,毎日20〜30分の
早歩きをすれば,目に見えるように心肺機能は改善されよう。人間の身体は使
わなければ,衰えるように出来ているのであり,しっかりと使ってやれば,機
能回復するようにできているのである。もし,事前に心肺機能の衰えを知りた
かったら,自転車に乗って少し速めにペダルを廻してみればよい。そこで貴方
は,息切れと動悸を経験することになるだろう。そして次の日には,土手を散
歩している自分を発見するはずである。
【肥満と膝痛の悪循環】
ところが,命を左右するほどではないが,悪循環に陥りやすいやっかいな病気
もある。その一つが, 肥満者の膝痛である。ある日,教室に60代後半の女性
が訪ねてきて,気功で膝痛を治したいという。見るからに自分の身体が重そう
で,動作が小錦さんのように遅い。彼女は,身長が160cmほどで, 体重が75kg
というから,ボディ・マス指数(BMI)が「29.3」とかなりの肥満である。余
談であるが, BMI(Body Mass Index)は,肥満の判定に使わる指数の中で,
世界中で最も高く評価されている。BMI=体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}で
計算され, 男性では「20〜25」, 女性では「19〜25」が正常域とされ, 男女共
にそれ以上を肥満として扱われている。読者の方も, 一度計算されてはどうだ
ろうか。
ところで, 肥満と膝痛には, 悪循環に陥りやすい深い関係があることはご存知
だろうと思う。膝が痛いから身体を動かすことを嫌がる⇒身体を動かさないか
ら太る⇒太るから膝に余計に負担がかかる, という悪循環である。このタイプ
の女性は, もともと身体を動かすことが嫌いで, 食べることが大好きなのであ
るから, ことは深刻である。そのうえ, 痛み止めの薬を長期間にわたり飲んで
いれば, 当然のこととして副作用が生じてくる。その副作用を治すために, さ
らなる薬の服用が必要とされる。病院に行く度に処方される薬の量が増えるば
かりである。このようにして, 悪循環は拡大の一途をたどることになる。奈落
の底へ転落していく自分を, ただ立ち尽くして見つめるだけである。肥満と膝
痛に悩む人が, この悪循環を断ち切るには, ケタ違いの努力が必要とされるだ
ろう。太るか痩せるかは, 食物の摂取量とエネルギーの消費量によって, 基本
的には決まることである。もし日々の生活の中で, 食事の量と運動量のバラン
スを保つことができていれば, 歳をとってから膝痛に悩まされることもないだ
ろう。これは, 肥満や膝痛に限った話ではなく, 糖尿病や高血圧症などの生活
習慣病にも言えることである。病気になってから治すよりも, 病気にならない
「予防」のための努力の方がほんの少しだけで済む。しかし, 多くの人は「分
かっちゃいるけど止められない」のである。大変不幸なことである。
※肥満と膝痛でお悩みの方は, まずは食事療法によって, 体重を落とすことか
ら始めなければなりません。その際, 食欲を減退させるための簡単な方法が
あります。知りたければ,「慢性病防治法専科」へご連絡下さい。
【「免疫力」の強化】
「心肺機能の衰え」には,早歩きなどの有酸素運動が有効であり,「肥満と膝
痛」には,水泳などの膝に負担のかからない有酸素運動と,食事療法が必要と
なろう。それでは,この冬に再び猛威を振るうことが危ぶまれている,新型肺
炎サーズの場合はどうであろうか。効果の高い予防治療薬ができるまで,まだ
数年待たないといけないから,当面は各自が防衛するしかない。もし,サーズ
が日本に上陸したら,外出はできるだけ避け,やもおえず外出するときには,
香港人のように大きなマスクをして感染を防ぐしかない。それでも,「O157」
のときもそうであったように,病気になる人とならない人,運悪く亡くなる人
と無事に生還できる人,に明暗が分かれるのである。この運命を二つに分けて
いるものを突きつめていけば,自己の「免疫力」に行き着くのである。「免疫
力」あるいは「自然治癒力」は,生命体に備わっている偉大な力である。十分
な栄養と睡眠,そして適度な運動は,「免疫力」を高めるための最低の条件で
ある。そしてその上で,この力を最大限に引き出すのが「気功」による鍛錬で
ある。気功を始めた人が最初に実感するのは,風邪を引かない身体になったと
いうことである。毎年冬になると寒波が来るたびに風邪を引いていた人が,周
囲で咳をしていてもあまり気にならなくなるという。明らかに「免疫力」が高
まった証拠である。風邪による国民医療費は,一年間でおよそ5000億円である。
【病気にならない予防医学の到来】
厚生白書によれば,1999年度の国民医療費は 30.9兆円で、前年度の 29.8兆円
と比べると1.1兆円(=3.7%)増加した,と書かれている。さらには,1990年
からは,毎年1兆円近い増加を続けているというから驚きである。この調子で
伸びれば,国家予算を追い抜くのも時間の問題である。国民医療費が膨張の一
途をたどれば,当然のこととして健康保険料に跳ね返ってくるから, 誰しも他
人事ではいられない。神戸大学医学部医学科の佐藤茂秋教授は『健康をきめる
要因として、主に不適切な生活習慣や行動様式(50%)、環境要因(20%)、
遺伝的要因(20%)、医療制度の不備(10%)』の四つを挙げている。佐藤教
授によれば,病気の予防には,生活習慣と環境要因が実に七割を占めていると
いうことになる。さらに別の調査結果では,『国民の生活習慣の改善によって
生活習慣病患者を半分に減らすことができれば、単純計算で全体の15%もの医
療費が削減できる』という計算もある。個人のレベルだけでなく,国家のレ
ベルでも,病気になってから治すのではなく,病気にならないようにする予防
医学が,いかに大切かが分かる。一般に予防医学では, 病気の進行によって三
段階に分かれている。第一次予防は, 健康増進・疾病予防であり, 第二次予防
は, 早期発見・早期措置であり, そして第三次予防は, リハビリテーションと
いうことになっている。佐藤教授は『二次予防の医療中心から一次予防の生活
習慣の改善を重視する方向に転換した総合的な予防医学戦略が21世紀には強く
求められます』と結んでいる。時代は, 第一次予防の「健康増進・疾病予防」
を求めているのである。気功の底力を発揮する時代が, 今まさに来たのである。
発行元: 日本気功倶楽部
監 修: 天地 一道
編 集: 森澤 陽子
※「バーチャル気功空間 気の世界」に掲載された内容を無断で複写、転載、転送および引用することを禁止いたします。なお、お友達の方へ紹介の為の転送は大歓迎です。
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